クーリングオフで情報商材を返金する方法!

「1日10分の作業で月収200万円」などと、誰でも簡単・確実に稼げるノウハウがあるなどと謳う情報商材についての消費者被害・詐欺被害が増加している。

全国の消費生活センター等に寄せられる情報商材に関する相談件数は、ここ数年で10倍程度増加している。

さらに、消費者庁は、2021年2月3日、情報商材の被害が新型コロナウイルス禍でアルバイト収入が減った大学生や専門学校生を中心に相次いでおり、全国の消費生活センターに寄せられた情報商材に関する20代からの相談は昨年、過去最多の2558件に上ったとして、注意を呼び掛けるチラシを作成し、注意を呼びかけている。

消費者庁HP「20歳代の若者の「情報商材」をめぐるトラブルの状況」より引用

当法律事務所では、これまで数多くの情報商材被害の相談・返金交渉等を行なってきた。

情報商材詐欺の被害にあった場合でも、早期かつ適切な対応をすることによって、返金可能性を高めることができるだろう。

今回は、情報商材の返金方法のうち、クーリングオフという制度を使った方法について詳細に解説していく。

クーリングオフ以外の返金方法や情報商材の手口の詳細については、以下の記事を参照して欲しい。

情報商材って何???

情報商材とは,インターネットの通信販売等で,副業・投資やギャンブル等で高額収入を受けるためのノウハウなどと称して販売されている情報のことをいう。

有益なノウハウが適切な値段かつ適法な方法で売られていれば何ら問題はない。

だが、世の中に溢れている多くの情報商材は、特定商取引法や消費者契約法に違反する違法な方法で販売されており、しかもその中身に値段相当の価値のないようなものだ。

「誰でも、簡単、確実に稼げる」

「短時間の作業(orほったらかしで)で高収入」

などと謳って、消費者を煽るのだ。

SNSなどで幅広く集客をして、そこからLP(WEBサイト)に誘導し、無料ないしは安価な情報商材をダウンロードさせる。その際に得た個人情報をもとに営業の電話をかけ、高額な商品を販売する。

「購入代金以上の金額を稼げるから大丈夫」「クレジットカードや消費者金融で借りてでも購入した方がよい」「チャンスは今だけ」などと言って、強引に商品を購入させるのだ。

そうして、高額な商品を購入させられた被害者が、実際に商品や情報商材のノウハウを使って稼ごうとしても、とてもじゃないが、短時間で高額な収入など得られない

被害者には借金だけが残るのだ…。

クーリングオフとはどんな制度なのか?

通常、当事者間の意思が合致することにより契約が成立する。

時計の売買の例でいえば、「この時計を売ってください。」という申込みの意思と、「わかりました。この時計を売りましょう。」という承諾の意思が合致すれば、時計についての売買契約が成立する。

そして、契約が成立した場合には、民法等が定める意思表示の取消事由や契約の解除事由などがない限りは、契約有効に存在しており、無かったことにはできない。

しかし、世の中には、消費者が冷静に商品の購入を検討して申し込むことができないような場合も存在する。たとえば、急に電話がかかってきて、巧みなセールストークで商品を売り込まれ、今だけ限定の価格で購入できると言われてついつい申し込みをしてしまった場合などだ。

このような場合には、よくよく冷静に考えてみたら、あの商品は必要なかった。契約を解除したいと思うことがある。

このような場合に、冷静に考えられる一定期間は契約を自由に解除できるという制度が必要だ。

それがクーリングオフという制度だ。

すなわち、クーリングオフとは、契約の申込み又は契約締結後一定期間内は、申込者等が無条件で申込みの撤回又は契約の解除ができる制度のことをいう。

このクーリングオフ制度は、特定商取引法(特商法)が定める契約類型がその対象となる。

具体的には、訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入、連鎖販売取引(マルチ商法)、業務提供誘引販売取引が対象となっている。

情報商材の場合には、電話勧誘販売、連鎖販売取引、業務提供誘引販売に該当することが多い

情報商材とクーリングオフ対象取引について

電話勧誘販売について

情報商材の勧誘は、SNS等で広く集客をした消費者に無料LPや少額のLPをダウンロードさせ、その後に、電話をかけて、バクエンドと言われる高額商品を売り込む方法で行われることが多い。

クーリングオフとの関係では、この電話での営業が電話勧誘販売取引に該当するかが問題となる。

電話勧誘販売取引とは、事業者が電話で勧誘し申込みを受ける取引のことをいう。政令で定める方法により電話をかけさせて勧誘し申込を受ける取引もこれに該当する。

特定商取引に関する法律第2条3項 

この章及び第五十八条の二十第一項において「電話勧誘販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が、電話をかけ又は政令で定める方法により電話をかけさせ、その電話において行う売買契約又は役務提供契約の締結についての勧誘(以下「電話勧誘行為」という。)により、その相手方(以下「電話勧誘顧客」という。)から当該売買契約の申込みを郵便等により受け、若しくは電話勧誘顧客と当該売買契約を郵便等により締結して行う商品若しくは特定権利の販売又は電話勧誘顧客から当該役務提供契約の申込みを郵便等により受け、若しくは電話勧誘顧客と当該役務提供契約を郵便等により締結して行う役務の提供をいう。

政令で定める消費者に電話をかけさせる方法については、以下の二つがある。

①当該契約の締結について勧誘するためのものであることを告げずに電話をかけることを要請すること
②ほかの者に比して著しく有利な条件で契約を締結できることを告げ、電話をかけることを要請すること

これらの場合には、消費者から電話をかけたとしても、勧誘されることが想定されずに不意打ち的に勧誘されて、契約をさせられたりするという点で、事業者から電話をかけた場合と同様に電話勧誘に該当すると規定したのだ。

電話勧誘販売では、消費者が受動的な立場におかれ、契約締結の意思が不安定なまま契約の申込みや締結に至るケースが多いことから、クーリングオフ制度が定められている。

電話勧誘販売でのクーリングオフ期間は、特商法が定める法定書面を受け取った日から8日間である。

情報商材についても、業者から電話がかかってきて契約をさせられた場合や、消費者から電話をかけた場合でも、契約締結の勧誘されることを知らず、又は、他の者に比して著しく有利な条件で契約をできると告げられて電話をかけさせられ、契約をした場合には、電話勧誘販売として、クーリングオフが適用される。

連鎖販売取引について

情報商材の販売や勧誘において、ネットワークビジネス、ねずみ講、マルチ商法的な勧誘・販売を行なっていることも多い。

友人知人を紹介してくれれば、その友人知人が購入した分の2割が報酬として与えられるような場合だ。

ねずみ講やマルチ商法という言葉は、それだけで違法のような印象を持っている人も多いが、直ちに違法となるわけではない。もっとも、消費者被害が生じやすい類型であるため、特商法では、連鎖販売取引として、クーリングオフ制度を含めた様々な規制が定められている。

連鎖販売取引とは、事業者が消費者を販売員として勧誘し、更にその消費者に次の販売員の勧誘をさせて、販売組織を連鎖的に拡大して行う取引のことをいう。

すなわち、以下の4つの要件を満たす場合に、連鎖販売取引と判断される。

  • 物品の販売または役務の提供などの事業であって
  • 再販売、受託販売もしくは販売のあっせんまたは役務の提供もしくはそのあっせんをする者を
  • 特定利益が得られると誘引し
  • 特定負担を伴う取引をするもの

情報商材の販売勧誘の例でいえば…

情報商材販売業者が大学生のAさんを「この商材を使えば必ず月100万円稼げる。友人を紹介してくれれば、その2割がAさんに入る。5人紹介すれば紹介料だけでも100万円稼げる。」と言って、Aさんを勧誘して100万円の商材を買わせる。

そして、Aさんは、大学のサークルの後輩のBさんを同様に勧誘し、Bさんも100万円の商材を購入する。

さらに、Bさんは…

と、ねずみ算式に情報商材の購入者・勧誘者が増えていくのだ。

  • 情報商材という物品の販売事業であって
  • 販売のあっせんをするBさんを
  • 友人を紹介してくれればその2割という特定利益が得られると誘引し
  • 情報商材代金100万円の特定負担を伴う取引

といえるから、この事例のケースでは、連鎖販売取引といえ、クーリングオフが適用される。

特定商取引に関する法律第33条1項

(定義)
第三十三条 この章並びに第五十八条の二十一第一項及び第三項並びに第六十七条第一項において「連鎖販売業」とは、物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。以下この章及び第五章において同じ。)の販売(そのあつせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて、販売の目的物たる物品(以下この章及び第五十八条の二十一第一項第一号イにおいて「商品」という。)の再販売(販売の相手方が商品を買い受けて販売することをいう。以下同じ。)、受託販売(販売の委託を受けて商品を販売することをいう。以下同じ。)若しくは販売のあつせんをする者又は同種役務の提供(その役務と同一の種類の役務の提供をすることをいう。以下同じ。)若しくはその役務の提供のあつせんをする者を特定利益(その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。以下この章及び第五十八条の二十一第一項第四号において同じ。)を収受し得ることをもつて誘引し、その者と特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。以下この章及び第五十八条の二十一第一項第四号において同じ。)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「連鎖販売取引」という。)をするものをいう。

連鎖販売取引でのクーリングオフ期間は、特商法が定める法定書面を受け取った日から20日間である。

業務提供誘引販売取引について

情報商材とクーリングオフとの関係でいえば、この業務提供誘引販売取引に該当するケースが圧倒的に多い。

業務提供誘引販売取引とは、提供される物品や役務により利益が得られると勧誘して、そのものを有償で提供する取引のことをいう。

具体的には、以下の要件を満たす必要がある。

  • 物品の販売または役務の提供(そのあっせんを含む)の事業であって
  • 業務提供利益が得られると相手方を誘引し
  • その者と特定負担を伴う取引をするもの

典型例としては、パソコンとソフトウェアを販売し、これを使ってホームページ作成をして収入が得られると誘引し、パソコン等の代金を支払わせる取引などがある。

情報商材の例でいえば、

  • 情報商材やこれに付随するコンサル役務を提供する事業であって
  • 情報商材やコンサルに従って簡単に稼げるという利益を提示して誘引し
  • 消費者に情報商材の料金やコンサルの料金という特定負担を伴う取引をするもの

であるといえれば、業務提供誘引販売取引に該当することになる。

情報商材の販売やそのバックエンド商材の販売においては、それを利用して、誰でも簡単に稼げるなどと謳っているケースがほとんどであるため、業務提供誘引販売取引に該当するケースが多いのだ。

特定商取引に関する法律

(定義)
第五十一条 この章並びに第五十八条の二十三、第六十六条第一項及び第六十七条第一項において「業務提供誘引販売業」とは、物品の販売(そのあつせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて、その販売の目的物たる物品(以下この章及び第五十八条の二十三第一項第一号イにおいて「商品」という。)又はその提供される役務を利用する業務(その商品の販売若しくはそのあつせん又はその役務の提供若しくはそのあつせんを行う者が自ら提供を行い、又はあつせんを行うものに限る。)に従事することにより得られる利益(以下この章及び第五十八条の二十三第一項第三号において「業務提供利益」という。)を収受し得ることをもつて相手方を誘引し、その者と特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。以下この章及び第五十八条の二十三第一項第三号において同じ。)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又はその役務の提供若しくはそのあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「業務提供誘引販売取引」という。)をするものをいう。

業務提供誘引販売取引でのクーリングオフ期間は、特商法が定める法定書面を受け取った日から20日間である。

クーリングオフの期間について

前述のごとく、クーリングオフの期間は、それぞれ以下の期間である。

  • 電話勧誘販売取引:8日間
  • 連鎖販売取引:20日間
  • 業務提供誘引販売取引:20日間

クーリングオフ期間の始期は、特商法が定める法定書面を受け取った日からだ。

この法定書面は、厳しい規制がなされている。

具体的には、法律が定める事項について、その全てを8ポイント以上の大きさの文字で記載し、クーリングオフに関する重要な事項については、赤枠の中に赤字で記載することが定められている。

なお、法律が定める事項について、業務提供誘引販売取引の例では以下の事項が必要だ。

  • 商品の種類、性能、品質に関する事項(権利、役務の種類およびこれらの内容に関する事項)
  • 商品(提供される役務)を利用する業務の提供(あっせん)についての条件に関する重要な事項
  • 特定負担に関する事項
  • 業務提供誘引販売契約の解除に関する事項
  • 業務提供誘引販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  • 契約の締結を担当した者の氏名
  • 契約年月日
  • 商品名、商品の商標または製造者名
  • 特定負担以外の義務についての定めがあるときには、その内容
  • 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項

クーリングオフ期間の終期については、クーリングオフの書面を発送した日が基準となる。

通常の取引においては、民法上、到達主義が定められており、書面が到達した日が基準となる。

特商法は、この到達主義の例外を定め、クーリングオフ期間について、発送日を基準としている。

クーリングオフの請求方法

クーリングオフは、「書面により」請求しなければならないと規定されている。

これは、クーリングオフが消費者からの一方的な申込みの撤回・契約の解除についての意思表示を定めたものであるため、権利関係を明確化する必要があり、「口頭」ではなく、「書面」による意思表示を要件としたのである。

この書面については、特商法が「書面」と「電磁的記録」を書き分けているため、メール等の電磁的記録は含まれないと解釈されている

そのため、実際に、紙の書面によって請求することが必要だった。

もっとも、令和3年に特商法が改正され、メール等の電磁的記録でもクーリングオフの通知ができるようになった。特商法の改正については、以下の記事を参照してほしい。

また、書面によりクーリングオフを請求したこと、クーリングオフ期間内に書面を発送したことを立証するためには、内容証明郵便を使って請求するのが良いだろう。

内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を誰から誰宛に差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明してくれる郵便のことをいう。

クーリングオフの際に、内容証明郵便に書く内容について、法律上細かい指定はされていない。そのため、契約に関する基本事項とクーリングオフにより契約を解除し、返金を求めるという内容が記載されてればよいだろう。

具体的には、以下の事項を記載しておけば良いだろう。

  • 当事者の氏名(会社名)と住所
  • 契約日
  • 契約書のタイトル
  • 商品名
  • 金額
  • クーリングオフにより契約を解除する旨
リンク:消費者庁HPより引用

クーリングオフ妨害について

クーリングオフ妨害とは、クーリングオフによ申込みの撤回や契約の解除を妨げるために、重要事項の不実告知をすること及び威迫をして困惑をさせることをいう。

クーリングオフを請求しようとした消費者に対して、情報商材の販売業者側が、クーリングオフができないなどと嘘をついたり、重要な事項を伝えなかったり、脅すようなことを言って、消費者がクーリングオフをできなくするような場合がクーリングオフ妨害に該当する。

クーリングオフ妨害の条文

特商法では、各販売類型ごとに禁止行為を定めており、その禁止行為の中に、クーリングオフ妨害についても規定されている。

電話勧誘販売の例で言えば、特商法21条がクーリングオフ妨害についての規定を含むものといえる。

特定商取引に関する法律

(禁止行為)
第二十一条 販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、又は電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない
一 商品の種類及びその性能若しくは品質又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
五 当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回又は当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(第二十四条第一項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第二項、第四項又は第五項の規定の適用がある場合にあつては、当該各項の規定に関する事項を含む。)を含む。)
六 電話勧誘顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、電話勧誘顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの


2 販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、前項第一号から第五号までに掲げる事項につき、故意に事実を告げない行為をしてはならない。


3 販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない

クーリングオフ妨害の罰則と逮捕事例

クーリングオフ妨害については、厳しい刑事罰が定められている。

具体的には、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(特商法70条1号)となる。

特定商取引に関する法律

第七十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第六条、第二十一条、第三十四条、第四十四条、第五十二条又は第五十八条の十の規定に違反した者

直近だと、2021年4月15日に、クーリングオフ妨害の逮捕事例がある。

期間内にクーリングオフの申し出があった際に、「キャンセルできない」と契約の解除について不実のことを告げたこと(クーリングオフ妨害)が逮捕理由になっています。

クーリングオフ期間に「キャンセルできない」男逮捕

自宅の屋根工事の契約を巡ってクーリングオフを申し出た80代の女性に対して「キャンセルできない」と嘘の説明をしたとして、リフォーム会社を経営する男が逮捕されました。

〇〇容疑者(23)は去年6月、東京・東久留米市の女性から請け負った屋根の修理工事について、期間内にクーリングオフの申し出があったのに「キャンセルできない」と嘘の説明をした疑いが持たれています。

警視庁によりますと、〇〇容疑者は「資材を手配したからキャンセル料を支払え」と迫って50万円を受け取っていました。

取り調べに対し、「弁護士と会ってから話す」と認否を留保しています。

周辺では同様の被害相談が多数あり、警視庁は佐藤容疑者が高齢女性を狙っていたとみて余罪について調べています。

2021/4/15 テレ朝news https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000213039.html

クーリングオフ妨害とクーリングオフ期間

平成16年に特商法が改正される前は、クーリングオフ妨害がなされた場合であっても、法定書面を交付されたときから法律が定めるクーリングオフ期間が経過した場合にはクーリングオフができなかった。

しかし、クーリングオフ妨害があった場合においてもクーリングオフ期間が経過してしまうことは妥当ではなく、法改正により、クーリングオフ期間経過後もクーリングオフができるようになった

もっとも、クーリングオフ妨害後、情報商材販売業者などの事業者が改めて、当該契約はクーリングオフができる旨などを説明し、その旨の書面を交付した場合には、その書面交付のときからクーリングオフ期間が再度始動する。

特商法の条文は難しいのだが、以下の条文の中の赤字にした部分にその旨が記載されている。

特定商取引に関する法律

(電話勧誘販売における契約の申込みの撤回等)
第二十四条 販売業者若しくは役務提供事業者が電話勧誘行為により電話勧誘顧客から商品若しくは特定権利若しくは役務につき当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みを郵便等により受けた場合におけるその申込みをした者又は販売業者若しくは役務提供事業者が電話勧誘行為により電話勧誘顧客と商品若しくは特定権利若しくは役務につき当該売買契約若しくは当該役務提供契約を郵便等により締結した場合におけるその購入者若しくは役務の提供を受ける者(以下この条から第二十四条の三までにおいて「申込者等」という。)は、書面によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等が第十九条の書面を受領した日(その日前に第十八条の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合(申込者等が、販売業者若しくは役務提供事業者が第二十一条第一項の規定に違反して申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該申込者等が、当該販売業者又は当該役務提供事業者が主務省令で定めるところにより当該売買契約又は当該役務提供契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した場合)においては、この限りでない。

クーリングオフ以外の情報商材の返金方法

以上が、情報商材について、クーリングオフにより返金請求する方法だ。

情報商材の販売については、そのほとんどが上記で記載したクーリングオフ対象取引になるものと考えられる。

仮に、クーリングオフ対象取引ではない場合でも、以下のような返金請求の法律上の根拠も検討できる。

  • 民法上の詐欺取消し
  • 民法上の債務不履行(契約不適合)に基づく解除・損害賠償請求
  • 民法上の不法行為に基づく損害賠償請求
  • 消費者契約法上の取消し(断定的判断の提供・不実告知・重要事項の不告知)

詳細については、以下の記事を参照してほしい。

情報商材をクーリングオフで返金する方法のまとめ

以上見てきたように、情報商材による消費者被害・詐欺被害が増えてきている。

情報商材の販売については、特定商取引法が規定する電話勧誘販売取引、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引に該当するケースが多い。

そして、これらの取引形態においては、クーリングオフにより、一定期間無条件に契約を解除し返金を求めることができる。

仮に、特商法が定めるクーリングオフ期間が過ぎてしまっていたとしても、法律が厳格に定めている法定書面の交付を受けていなければ、クーリングオフ期間はスタートせず、クーリングオフができる。

また、法定書面の交付を受けていたとしても、クーリングオフ妨害がなされた場合には、再度の説明と書面の交付がなされなければクーリングオフができる。

このように、法律上、情報商材については、返金請求できるケースが非常に多いので、情報商材詐欺の被害にあってしまった場合はには、速やかに弁護士等に相談して、返金請求をしていくべきだろう。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。