情報商材詐欺の手口とその返金方法を弁護士が徹底解説【逮捕事例・返金成功事例あり】

近年,悪質な情報商材詐欺の被害が増えてきている。

誰でも,簡単に,確実に,稼げるなどと謳い文句に騙されて高額な商材を購入してしまったり,コンサル費用を払ってしまったりという被害が相次いでいる。

2020年10月2日には,情報商材を販売した詐欺師が特定商取引法(特商法)違反の罪で逮捕された。

この事件では,被害者数は約450人,被害総額は約3億5000万円にもなる。

当法律事務所の弁護士達は,これまで数多くの情報商材詐欺の返金相談・依頼を受けてきた。

また,情報商材を販売して逮捕されてしまった被疑者の刑事弁護の経験もある。

本記事では,これらの経験に基づく情報商材詐欺の手口,現状,情報商材の違法性や返金の法的根拠,情報商材詐欺の返金方法などについて,できるかぎり詳細に記載した。

そのぶん長い文章になってしまったが,詳しく・わかりやすく記載する努力をしたので,ぜひ最後まで読んでもらえたらと思う。

またYouTubeでの動画もあるので,ぜひ見てほしい。

春木開氏・竹花貴騎氏が炎上‼︎ 情報商材詐欺の手口、返金はできる?【弁護士解説】

もし情報商材詐欺の被害に遭い,返金を求めている人の中で,こんな長い文書読めないよという人は,当法律事務所宛に直接ご連絡ください。

情報商材とは

情報商材の定義と違法性

情報商材とは,インターネットの通信販売等で,副業・投資やギャンブル等で高額収入を受けるためのノウハウなどと称して販売されている情報のことだ。

情報商材自体,すべてが違法なものではない。

考えてみてほしい。
自分が持っている価値ある情報を適正な価格で販売すること自体は非難される行為ではない。

たとえば私が弁護士になる前に個人でアフィリエイトをやっていた頃などは,インフォトップなどのASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)にて,売れっ子ホストが女性の口説き方やモテるテクニックを情報商材として販売していた。
また,実際に稼いでいるアフィリエイターがアフィリエイトの始め方やコツなども情報商材として販売もしていた。

さらに現在では,note.comにて,それぞれの分野の専門家などが有料noteを販売するのが増えてきている。
これも情報商材の一類型といえそうだ。

このように媒体や内容は違えど,過去から現在まで様々な情報商材が販売されており,その多くは有益な情報を販売する適法な情報商材といえるだろう。

ただ残念ながら,悪質で詐欺罪や特定商取引法違反の罪に該当するような違法な情報商材も少なからず存在する。

弁護士,消費者庁,国民生活センターや全国の消費生活センターが警告する情報商材とは,消費者被害を生む悪質な情報商材詐欺を指す
本記事においても悪質な情報商材詐欺について解説していく。

情報商材詐欺の相談件数(消費者白書参照)

消費者庁が,消費者問題の集約と今後の消費者政策の方向性を示すために毎年公表している「消費者白書」によると,情報商材詐欺や副業詐欺の相談件数は増加傾向にあり,特に,20代前半の若者の相談件数が増加している。

具体的な事例では,「マッチングアプリで知り合った女性に高額なビジネススクールを勧められ、『今やらないといつまでたってもやらない』等と言われて、その気になってしまい入会したが、説明と違う」「SNS広告から副業サイトに入り情報商材を購入したら、更に電話で高額なサポート契約を勧誘された。お金がないので払えないと断ったのに借金を勧められ、断り切れずに契約してしまったが、広告とは違う内容だった」などの相談が寄せられている。

若者の情報商材についての被害相談件数
令和4年版消費者白書より引用(消費者庁HP

情報商材詐欺の種類と形式

情報商材詐欺の種類としては,副業,投資,ギャンブルに関連するものが多い。
勧誘の入り口が「この情報商材を買えば儲かるよ」というものだからだろう。

副業では,アフィリエイト,ブログ,せどり,最近では,YouTubeやInstagramのアフィリエイトや企業広告などが流行している。

投資では,FX,仮想通貨,バイナリーオプションなどが多い。
直近の逮捕事例もこのケースだ。

ギャンブルでは,競馬必勝法,パチンコ必勝法などがある。

国民生活センター相談情報部より引用

情報商材の形式は,PDF等の電子媒体,動画,メールマガジン,アプリケーション,冊子,USBやDVD等がある。

また,情報商材詐欺事例では,情報商材自体の価格は安く設定されているものの,その後に執拗な電話勧誘をするなどして高額なソフトウェアやコンサルティング等,バックエンドといわれる高額商品を買わせる手口も多い。

それでは,情報商材詐欺の手口について詳述していく。

情報商材詐欺の手口とは

集客・誘導から契約・支払いまでの流れ

前述のとおり当法律事務所では,数多くの情報商材詐欺につき相談・依頼を受けてきた。

フロントの商材やバックエンドの商品自体は時代時代の流行によって変化するものの,情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)の手口の基本構造は同じだ。

集客・誘導から,契約をさせて支払いをさせるまでの流れは以下のとおり。

  1. SNS等で広くアプローチ
  2. 無料LP(ランディングページ)で勧誘
  3. メルマガやLINE@で囲い込み
  4. 無料商材か1万円程度の少額の情報商材を購入させる
  5. 電話勧誘にて高額のバックエンド商品・コンサル等を契約・入金させる

1つ1つ,みてみよう。

SNS等で広くアプローチ

情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)は,実に多様な方法でアプローチをする。
近年の悪質な情報商材詐欺の被害に遭ってしまう最も多くのきっかけが,このSNSなどによるアプローチだ。

LINE,Facebook,Twitter,InstagramなどのSNSアカウントを複数作って,DMで儲かる話があるよなどと接触をしてくることが多い。

最近では,YouTubeやTikTokなどの動画から勧誘することもある。

また,副業サイトや求人サイトに広告を出稿しているケースも見受けられる。

さらに,悪徳な情報商材詐欺師は,グループで活動をしていることもある。

具体的には,同じような情報商材を売る法人(会社)・代表者を複数用意して,それぞれで販売を行う。
そのようなグループでは,グループ内で顧客情報の共有はもちろんのこと,名簿屋から過去に情報商材や高額な商品を買った人などの名簿を購入したりして,組織的に勧誘を行っている。

なお,これらの集客・アプローチについては,情報商材詐欺師(悪質な情報商材屋)自体ではなく,別会社である広告会社が請け負っているケースもある。

無料LP(ランディングページ)で勧誘

①のSNSアカウントなどから,儲かる話があるなどと誘われて,その紹介ページに訪れる。

その先にあるのが,この無料LPだ。

LP(ランディングページ)とは,広告等のURLを最初にクリックした際に表示されるWebページのことだ。

ここには,その情報商材がどれだけ魅力的で稼げるものなのかが記載されている。

広告塔になるべきカリスマ,ニートだったのに短期間で億万長者になったとか,高齢なのにビジネスを始めて1日10分の作業で大金持ちになったとか,そんな成功事例が作り出されていることが多い。

この無料LPで,③のメルマガやLINE@に登録をさせたり,④の無料・少額の情報商材を購入させたりして,被害者の個人情報を取得するのだ。

具体的な勧誘文言や広告文言については,後述する。

メルマガやLINE@で囲い込み

②の無料LPで勧誘した後,メルマガやLINE@などに登録をさせて,当該商材の魅力を継続的にアピールする手法が使われることもある。

具体的には,事前に準備をしたメッセージをスケジュールに沿って定期的に配信するマーケティング手法である「ステップメール」を用いていることがよく見受けられる。

お金を稼げる人のマインドやお金を稼ぐ手法といった情報を配信し,最終的にはその商材を購入することが金儲けの近道だという方向で被害者を教育・洗脳していくような内容になっているのがほとんどだ。

その後,④の無料や少額の情報商材販売ページに誘導される。

また,④を経ずに⑤の電話勧誘が行われるケースもある。

無料の情報商材か1万円程度の少額の情報商材を購入させる

②のLPや③のメルマガ・LINE@などで誘導され,無料や少額の情報商材販売ページにたどりつくことになる。

このページでも引き続き,当該情報商材を入手すれば誰でも,簡単に,大金が稼げるような魅力的な商材が宣伝されている。

そしてこの段階になると,無料または少額ならば情報商材を購入してみようと思わせる状況になっていることが多い。

しかし実際には,この無料・少額の情報商材には具体的な稼ぎ方や自分だけでできる稼ぎ方はほとんど記載がされていないのだ。

では何が記載されているかというと,誰でも,簡単に,大金が稼げるこの商材を効果的に実行するためにはバックエンドのツールやコンサルが必要だということが記載されている。

くわえて,具体的な稼ぎ方を教える,ビジネスのサポートをするので,電話してください的な内容が記載されているのである。

こうして,電話サポートの申込みをさせられるのである。

電話勧誘にて高額のバックエンド商品・コンサル等を契約・入金させる

④の商材から電話相談予約をさせられたり,②・③の過程で電話番号を情報商材詐欺を行う詐欺師に握られることにより,電話勧誘が開始される。

電話勧誘においては,バックエンドの高額商品を執拗かつ強引に売り込まれる。

確実に高額なバックエンド商品の金額を超える金額を稼げる。
だから,お金を借りてでもこの契約をした方がお得だと説得するのだ。

その際,万が一稼げなくても返金保証があるからなどと甘い言葉をささやくこともある。

こうして,電話にて被害者が冷静に判断できない状況にして高額なバックエンド商品を契約させ,支払いをさせるのだ。

情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)は,以上のような流れの手口で情報商材詐欺をおこなっている。

以下では,具体的にどのような誘い文句で誘ってくるのかを述べていく。

LPや販売ページの勧誘方法

SNS等で集客した被害者が訪れる無料LPやその後の少額な情報商材の販売ページには,どのような誘い文句が記載されているのだろうか。

以下のような文言・情報が記載されている場合には,悪質な情報商材詐欺である可能性が高いので注意が必要だ。

①誰でも,簡単,確実に稼げる

誰でも:スマホに慣れない高齢者でも,専業主婦の人でも,社会経験のない学生さんでもなど,どのような属性の人でも稼げることをアピール。

簡単に:1日10分の作業で,ツールに従って操作するだけで,音読をするだけでなど,短時間かつ簡単な作業で稼げることをアピール。

確実に再現率100%,確実に稼げる,絶対に損はしないなどと,断定的表現で,確実性をアピール。

このように,誰でも,簡単に,確実に稼げることをアピールする。
そして,被害者は自分でも短時間で簡単確実に稼げるのではないかと思い,次のステップに進んでしまうのだ。

しかし残念ながら,誰でも簡単確実に稼げるような夢のビジネスは存在しないのが現実。

したがって,このような誘い文句がある場合は気をつけなければならない。

②今だけ限定(時間制限)や特別価格(二重価格表示)

時間制限:先着10名限定,今月中にお申し込みされた人に限り,など短期間限定の儲け話であることをアピール。

特別価格(二重価格表示):定価〜円だが,このページで申し込んだ人は…円など,本来はもっと高額な商品だけど特別に割引いてるアピール。

人が限定商品に弱いことはよく知られている。
今だけ,自分だけ,特別なものだと思うと,つい誘いに乗ってしまうのが人の性だ。

この人の性を利用して,本来はあるはずもない時間制限や定価を表示し,あたかも特別なように思い込ませる手口だ。

このようなキーワードが出てくる場合も,注意が必要となる。

③顔出しの広告塔(カリスマ)

悪質な情報商材詐欺やマルチ商法(ネズミ溝,連鎖販売取引,MLM)でよく見られるのが,虚構のカリスマの存在だ。

億万長者で,仕事をせず海外で楽をして優雅な生活をしているカリスマがいて,そのカリスマが発明した画期的な儲け話を皆さんに伝授しようというストーリーだ。

あるいは,冴えない人生を送っていたが,ある日,この情報商材が教えるビジネスに出会って億万長者になったとか,定年後に隙間時間で年金以上の金額を稼ぎだす高齢者など,楽して簡単確実に大金を稼いでいる理想像の広告塔が出演している。

この商材を購入したら,この人みたいになれるという理想像を具現化したカリスマがそこに描かれている。

しかし,多くの場合,それは虚構のカリスマだ。

実際には,そんな人物は存在しないか,情報商材詐欺の被疑者から集めた資金で豪遊をしているのかのいずれかだろう。

ゆえに,カリスマといえる広告塔が顔出ししている情報商材も疑ってかからなければならない。

④情報商材を使ってみた稼いだ成功者の体験談

こちらも非常に多い例だ。

①で説明した「誰でも」稼げるという具体例,③の実際に稼いでいる人の理想像の庶民派バージョンといったところだろうか。

男女,年齢,職業,家族構成など様々な属性の人たちが,PC・スマホに弱い機械音痴な私でも稼げました,忙しい子育てと主婦業の隙間時間の簡単作業で稼げました,などと具体的に稼げた成功体験を語っているのである。

もちろん,これも裏付けとなる人がいる訳ではなく,情報商材詐欺を行う詐欺師が作成した架空のフィクション,ストーリーだ。

よって,一般人と思われる成功者の体験談があるからといって,安易に信用してはいけない。

以上のように,情報商材詐欺を宣伝広告する無料LPや販売ページでは,魅力的な情報や憧れる生活をしているカリスマを掲載し,自分でも確実簡単に稼げ,カリスマのようになれるのではないかと被害者を錯覚させ,時間制限や二重価格表示を利用した特別価格で申込みを誘引するという手口が使われている。

何度も言うが,甘い話はない。

美味しい話であればあるほど警戒してほしい

電話勧誘時の勧誘方法

情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)は,上記の勧誘手法でアプローチされた被害者に対して,電話での無料サポートに誘導する。

または,事前の登録や少額の情報商材の販売時に把握した被害者の電話番号に電話がかかってくる。

被害者は,電話サポートを受ければ,当該情報商材を利用して稼げる具体的なアドバイスが聞けるだろうと思い,電話サポートを希望する。

しかし実際には,電話で具体的な稼ぎ方などのアドバイスは受けられず,バックエンドの高額商品や高額サービスを売りつけられるのだ。

「あなたには,100万円のプランが適切です」

「確実に100万円以上稼げるので,実質無料です」

「稼げるように徹底的にサポートします」

「稼げない場合には返金プランもあります」

「お年寄りの方でも毎月30万稼いでいます」

などと,誰でも,簡単,確実に稼げる。
稼げるのだからバックエンドの高額商品も高くない旨を執拗に説得される。

現金振り込みができない被害者にはクレジットカードでの支払いや消費者金融での借入をすすめ,その支払日には支払額以上を稼いでいるから大丈夫などと伝えて,早期の支払い・決済を迫る

だが,いざ購入して言われるとおりに運用しても,高額なバックエンド商品を超える金額は到底稼ぐことはできない。

そして返金を要求しても,返金には条件がありその条件を達成していないなど何かしらの理由をつけ返金を受け付けてもらえず,はじめて被害に気がつく構図となる。

具体例でみる情報商材詐欺の手口

情報商材詐欺の手口の具体例については,消費者庁のHPで確認できる

消費者庁は,国民生活センターや消費生活センター(消費者センター)への相談や苦情が多い案件について,消費者安全法45条1項に基づき報告徴収・立入調査を行い,情報商材の違法性を調査する。

内閣総理大臣は,上記調査で判明し,違法性があったものや,消費者被害の拡大を防ぐ必要があるもの,同種・類似の被害を防止する必要があるものについて,注意喚起のため公表を行うことができる(消費者安全法38条1項)。

これらの消費者安全法に基づく手続きを経て公表された悪質な情報商材詐欺の手口が消費者庁のHPに掲載されているのだ。

リンク:消費者庁のHP「財産に関わる危険」

消費者安全法

(消費者への注意喚起等)
第三十八条
 内閣総理大臣は、第十二条第一項若しくは第二項又は第二十九条第一項若しくは第二項の規定による通知を受けた場合その他消費者事故等の発生に関する情報を得た場合において、当該消費者事故等による被害の拡大又は当該消費者事故等と同種若しくは類似の消費者事故等の発生(以下「消費者被害の発生又は拡大」という。)の防止を図るため消費者の注意を喚起する必要があると認めるときは、当該消費者事故等の態様、当該消費者事故等による被害の状況その他の消費者被害の発生又は拡大の防止に資する情報を都道府県及び市町村に提供するとともに、これを公表するものとする。

(報告、立入調査等)
第四十五条
 内閣総理大臣は、この法律の施行に必要な限度において、事業者に対し、必要な報告を求め、その職員に、当該事業者の事務所、事業所その他その事業を行う場所に立ち入り、必要な調査若しくは質問をさせ、又は調査に必要な限度において当該事業者の供給する物品を集取させることができる。ただし、物品を集取させるときは、時価によってその対価を支払わなければならない。

消費者安全法 

直近の情報商材についての公表事例は,2022年11月17日の事例で株式会社クレヴァー及び株式会社カーマインについての事例だ。

令和3年5月以降,「スマホで簡単 月収100万円」,「定型文を送信した分だけ報酬発生」などとうたう副業のマニュアルを購入させられた後,電話勧誘により,ライブ配信希望者を勧誘し,ライブ配信事業者に登録させるエージェントになるためとして高額なサポートプランを契約させられるというものだ。

詳細については、消費者庁のHPを見て欲しい。

情報商材詐欺返金の法的根拠

情報商材詐欺の被害にあってしまったら,その被害金を返金してほしいと考えるだろう。

では,法律上どのような根拠で被害金の返金を請求できるだろうか。

クーリングオフについては,中学校の社会の授業で習った記憶もあるし,皆さん聞いたことがあるのではないでしょうか?

クーリングオフの他,消費者契約法上の取消事由や,民法上の詐欺取消し,不法行為の損害賠償請求などが考えられるため,以下,解説する。

情報商材とクーリングオフ

クーリング・オフとは、申込みまたは契約の後に,法律で決められた書面を受け取ってから一定の期間内に,無条件で申込みの撤回又は契約の解除を行うことができる制度のことだ。

クーリング・オフは,特定商取引法(特商法)に規定されている。ここでは、その概略を記載するに留める。

情報商材をクーリングオフで返金する方法の詳細やクーリングオフ妨害等については、以下の記事を参照してほしい。

クーリング・オフができる対象取引は,訪問販売,電話勧誘販売,特定継続的役務提供,訪問購入,連鎖販売取引(マルチ商法),業務提供誘引販売取引(内職商法)に限定されている。

情報商材詐欺の返金では,電話勧誘販売,業務提供誘引販売,連鎖販売取引を理由にクーリングオフをすることが多い。

また,クーリング・オフには期間制限があり,訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入においては8日間,連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引においては20日間という制限がある。

もっとも,この期間制限は,特定商取引法が定める法定書面を受け取った日からスタートする。
この法定書面の要件は厳しく,情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)が要件を満たした法定書面をしっかりと交付しているケースはほとんどない。

その場合には,クーリングオフの期間は気にしなくて大丈夫だ。

クーリングオフの意思表示は書面で行わなければならない。
これは,クーリングオフが購入者からの一方的な契約解除等を定めるものであるから,その意思を明確にするとともに,後日の紛争を防ぐ趣旨の規定だ。

弁護士が行う場合には,内容証明郵便により,その意思表示の内容が証拠に残るような方法で送付する。
ご自身でクーリングオフをする場合にも,内容証明郵便で行うのが好ましい。

また,やむを得ず,葉書等でクーリングオフの書面を送付する際には,葉書の写しを保管し,簡易書留等の送達記録が残る方法で郵送してほしい。

なお,クーリングオフ書面の記載例について,消費者庁のHPの記載・画像を引用するので参照してほしい。

また,令和3年に特商法が改正され,クーリングオフについて,メール等の電磁的記録によってもその通知ができるようになった。

改正特商法については以下の記事も参照してほしい。

リンク:消費者庁HP クーリングオフについてより転載

断定的判断の提供・不実告知・重要事項の不告知(消費者契約法・特定商取引法)

消費者契約法は,消費者が事業者との間には持っている情報の質・量や交渉力に格差があることから,消費者の利益を守るため,不当な勧誘による契約の取消しと不当な契約条項の無効等を規定している法律だ。

情報商材詐欺との関係では,不実告知,重要事項の不告知,断定的判断の提供が問題になることが多い。

不実告知とは,契約の重要な部分について虚偽の事実を告げることをいう。
情報商材でいえば,本当は1日5分の作業で誰でも簡単に大金を稼げるビジネスではないにもかかわらず,虚偽の事実を述べる場合などが該当する。

重要事項の不告知とは,契約の重要部分について伝えるべきことを伝えないことだ。
情報商材でいえば,本当は細かく設定がされた条件をクリアしないと返金されない規定であるにもかかわらず,その条件を告げずに,返金できるので大丈夫とだけ告げるような場合だ。

断定的判断の提供とは,将来において不確実な事項について,確実であるかのような断定的な言い方をすることだ。
情報商材でいえば,確実に100万円稼げますなどと告げる場合だ。

悪質な情報商材詐欺のケースでは,これらがなされていることが多い。

そのような場合には,契約の申し込みに意思表示を取り消すことにより,契約で支払った金銭の返金を請求ができる

また,特定商取引法では,不実告知,重要事項の不告知,威迫・困惑させることを禁止しており,3年以下の懲役・300万円以下の罰金という罰則も定められており情報商材での逮捕事例もある。
詳細は後述する。

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条
 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

消費者契約法

詐欺取消し・不法行為

民法では,詐欺により騙されて行った意思表示を取り消すことができる(民法96条1項)。

情報商材の販売において,虚偽の事実を伝えて詐欺をした場合には,この詐欺取消しにより意思表示を取り消し,返金請求ができる。

また,詐欺に該当しないとしても,その勧誘方法において違法性があるような勧誘方法であれば,不法行為に該当し,これにより生じた損害(情報商材やバックエンド商品の代金など)について,賠償請求ができる(民法709条)。

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法

情報商材詐欺の返金方法

情報商材詐欺の被害にあってしまった場合の返金方法としては,大別すると3つの方法がある。

被害者が自分で返金請求をするか,弁護士に依頼をして返金請求をするか,消費生活センター(消費者センター)を通じて返金請求をするかの3つだ。

弁護士に依頼をして返金請求をする場合には,上述したような法的根拠や知識に詳しいプロに任せることができるというメリットがある。

また,詐欺被害の返金に強い弁護士に依頼をすれば,内容証明郵便の送付,交渉,仮差押え,訴訟,差押え,口座凍結,チャージバック請求,刑事告訴など,複数の返金方法から状況や予算に応じて最適な方法を選択してくれるというメリットもある。

他方で,弁護士に依頼をする場合には,弁護士費用・報酬がかかるというデメリットがある。

その点,自分で返金請求をする場合や消費者センターを通じて返金請求をする場合には,費用がかからない点がメリットといえる。

ただ残念ながら,自分で返金請求をしても,なかなか応じてもらえないことが多い。
なぜなら,情報商材を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)は,自らの商材に騙されたいわゆるカモとして被害者をナメている状態なので,あの手この手で返金をさせないようにしてくるからだ。

そのため,被害金額が少額である場合や,弁護士費用を払えない方などは,消費者センターに相談に行って対応をしてもらった方がよいだろう。

しかし,消費者センターでは,訴訟等により強制的に返金をさせる手段を取れないという点がデメリットになる。

弁護士による情報商材詐欺の返金方法

弁護士が被害者から依頼を受けて,代理人として情報商材詐欺の返金請求をする場合には,内容証明郵便の送付,交渉,仮差押え,訴訟,差押え,口座凍結,チャージバック請求,刑事告訴など様々な手法を駆使して返金請求をしていくことになる。

内容証明郵便の送付・交渉

内容証明郵便とは,送付した文書の内容と日付を郵便局が公に証明してくれる郵便のことだ。

文書を送ったことや,その日付,文書が到達したことが客観的に証明されるため,弁護士が重要な書面を送付する際には内容証明郵便にて送付することが多い。

情報商材との関係でいえば,クーリングオフの請求は書面性が要求されていることからも内容証明郵便にて送付するのが好ましい。

この内容証明郵便には,弁護士が被害者の代理人となったことや,当該情報商材について返金や損害賠償を請求する法的根拠を記載する。

そして,当該情報商材の違法性を指摘して,返金がされない場合には,刑事告訴や訴訟等の法的措置をとる旨などを記載する。

これにより,自らの行為の違法性を認識している多くの情報商材詐欺師等は,刑事事件化や訴訟を嫌がり,任意に返金に応じてくることがある。

具体的には,情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)はある程度の返金について想定をしている場合が多い。

というのも,弁護士に依頼してまで返金を求めてくる被害者は少なく,弁護士が出てきた場合にだけ返金をした方が大ごとにならず,まだ情報商材詐欺を続けることも可能なので,結果として得だと考えているからだ。

ある意味,詐欺・債権回収において,詐欺師・債務者側は,めんどくさい者や自らの不利益になる行動をする者から順に優先順位をつけて返金をしていく傾向にあるといえる。

したがって,情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)にとって,返金すべき被害者だと思わせるのが回収の近道だ。

なお証拠関係や相手方の情報が少ない場合などには,内容証明郵便ではなく,直接相手との交渉を行うというケースもある。

当法律事務所の解決事例で,その日のうちに相手との話し合いがまとまり,合意書を作成し,返金がなされたものもあるので,証拠関係や相手方の情報が少ないからといって,ただちに諦めなければならないわけではないことは覚えていてほしい。

仮差押え・訴訟・差押え等の裁判手続き

お金の回収の最終手段といえば,訴訟等の裁判をイメージする人が多いと思う。

裁判所を通じた手続の中で,仮差押えとは,正式な裁判の前に相手が財産を隠したり散逸させないように事前に財産を差し押さえる手続だ。

一方,差押えは,裁判により確定した判決・債務名義をもって,相手の財産を差し押さえる手続だ。
弁護士による債権回収の王道の方法ともいえるだろう。

しかし,訴訟手続は,時間がかかる。
訴えを提起してから判決が出るまでに1,2年かかることはザラにある。

さらに,差押えをするためには相手の財産を特定しなければならないが,詐欺師等は契約名義の口座にお金を入れず,入ってもすぐに引き出すなどして資産を隠しているケースも多い。

そのため,情報商材を含む,詐欺事件での債権回収では,訴訟等の手続が有効ではないこともあるので,その点は頭に入れておいてほしい。

もっとも,2020年4月から,民事執行法が改正され,差押財産の調査方法が拡大し,財産開示手続という制度の罰則が強化されたことにより,訴訟からの差押えの実効性が高まることが期待されている。

債権回収と民事執行法の改正については,以下の記事を参照してほしい。

【民事執行法改正・財産開示・養育費】裁判で勝ったのにお金が支払われないときの対処法!【債権回収】

振り込め詐欺救済法による口座凍結

振り込め詐欺救済法とは犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律の略称であって,預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた方の財産的被害の迅速な回復等に資することを目的とする法律だ。

この法律は,闇金や振り込め詐欺などの詐欺事件において,犯人は,振り込まれた預金をすぐに引き出すことが多く,迅速に口座を凍結することにより,被害回復を図る必要があることから,制定された法律だ。

この振り込め詐欺救済法に基づいて,警察弁護士が,詐欺師の銀行などの金融機関の預金口座の取引停止等の措置(口座凍結)を要請する。

銀行等の金融機関は,この要請に応じて銀行口座を凍結する。

その後,詐欺師などの口座名義人の預金債権を消滅させ,その債権を原資として,被害回復分配金を被害者に支払うという流れになる。

口座凍結の対象となる犯罪は,詐欺その他の人の財産を害する罪(振り込め詐欺救済法2条3項)だ。
詐欺罪や出資法違反の罪が典型例だ。

情報商材における特定商取引法などに違反している場合について,単に特商法に違反しているというだけでは財産に対する罪とはいえないので,対象にはならない。

もっとも,特商法においても法定書面の不交付や虚偽記載についてなど刑事罰が定められており,これらの罪に該当する行為により財産的な被害があった場合には,口座凍結の対象である「人の財産を害する罪」に該当すると考えられる。

第二条 
3 この法律において「振込利用犯罪行為」とは、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたものをいう。

振り込め詐欺救済法

そして,この人の財産を害する罪に該当する疑いがあれば,口座凍結ができる(同法3条1項)。

ただし,口座を凍結してみたものの,実際には犯罪に該当しないような場合については,口座凍結を要請した警察,弁護士が不法行為の損害賠償請求をされてしまうことがあるため,慎重な判断が要求される。

この点について,裁判例では,当該口座が犯罪に利用されていたと考えるについて合理的な理由があったかどうか,必要な調査をしたかどうかなどの点から判断されている(東京地判平成24年9月13日など)。

第三条 金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずるものとする。

振り込め詐欺救済法

本件口座が犯罪に利用されたと疑うことに合理的な理由があったということができるから、本件停止措置は、法三条一項に基づき、適法に行われたものと認められる。そうすると、同措置の根拠である法三条一項の要件を欠くに至り、そのことを被告が認識したなどの特段の事情がない限り、被告が本件停止措置を解除するよう求めなかったとしても、違法とはいえないというべきである。

東京地判平成24年9月13日より引用

金融機関が詐欺師等の口座を凍結すると,預金保険機構のHP条で失権についての公告が行われる。
この公告により口座凍結がなされたかどうかが確認できる。

そのため,情報商材詐欺等の詐欺被害にあった場合,相手方の口座が凍結されているかどうかをHP上で調べることができる。

リンク:預金保険機構のHP

このように,情報商材詐欺の被害に遭い,その証拠関係等から弁護士が詐欺罪や特商法上の刑事罰のある犯罪行為に該当すると判断した場合には,口座凍結の手段により,被害金の返金の請求をすることができる。

チャージバック・クレジット契約の取消

前述のように,情報商材の販売やバックエンド商品の販売において,クレジットカードでの決済が行われることも多い。

その場合には,チャージバック制度による返金や,クレジット契約を取り消すことによる返金等の手段がある。

チャージバックとは,クレジットカードの不正利用などの一定の理由がある場合に,会員(被害者)に返金がなされる制度であって,国際ブランドが定める制度のことをいう。

「国際ブランド」とは、VISA、JCB、Master Cardなどをはじめとしたクレジットカードブランドのことだ。
これらの国際ブランドがチャージバックという制度を定めている。

弁護士が,本件情報商材等の販売契約は,詐欺に該当することや,特定商取引法・消費者契約法に違反するものであることなどを主張し,本件契約を取り消すことができる旨を主張し,チャージバックリーズンと呼ばれるチャージバックの要件を満たしていることを主張するのだ。

またクレジットカードで情報商材等を購入した場合においては,このチャージバック請求の他に,割賦販売法に基づく返金方法がある。

具体的には,割賦販売法では,情報商材の販売等の契約の取り消しなどによる抗弁権が接続され,この抗弁権に基づき支払停止の抗弁を主張するという方法がある。

さらに,個別のクレジット契約自体の取消しを請求するという方法もある。

これらの返金請求について,クレジットカード会社や決済代行業者に対して,弁護士は内容証明郵便にて請求をしていく。

なお情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)は,自らの信用でクレジット契約をできないことが多く,保証金等の名目で多額の資金を預け入れるかたちで決済代行業者を利用しているケースがよくみられる。

その場合には,これらの返金請求を行うことにより,決済代行業者から情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)に連絡がいき,場合によっては取引を停止されたり,契約の解除や保証金等の預け入れた資金の没収もあり得る。

ゆえに上記の取引停止等を避けるべく,情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)が任意に返金を行う結果となることもある。

そして仮に情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)が任意の返金を行わなくても,実務上も,チャージバック等により返金がなされるケースも多数存在する

チャージバック,支払停止の抗弁,クレジット契約の取り消しについては,以下の記事で詳細に解説をしているので,こちらを参照してほしい。

被害届・刑事告訴

情報商材の販売やバックエンド商品の販売の際に,嘘をついて販売をしたり,特定商取引法が定める法定書面を交付しない場合には,情報商材等の販売が犯罪に該当する。

詐欺罪とは,嘘をついて(疑罔行為),人を騙して(錯誤),お金などの財産を交付させることだ。
情報商材の販売においても虚偽の成功者を捏造するなど嘘をついて,騙された人から商材等の代金を支払わせた場合には,詐欺罪に該当する。

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

刑法

また,特定商取引法では,電話勧誘販売,業務提供誘引販売,連鎖販売取引などの取引形態において,不実告知,重要事項の不告知,威迫・困惑させることを禁止している(同法21条など)。
これに違反した場合,3年以下の懲役・300万円以下の罰金という罰則(同法70条第1号)が定められている。

第二十一条 販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、又は電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない
一 商品の種類及びその性能若しくは品質又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
五 当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回又は当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(第二十四条第一項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第二項、第四項又は第五項の規定の適用がある場合にあつては、当該各項の規定に関する事項を含む。)を含む。)
六 電話勧誘顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、電話勧誘顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの

2 販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、前項第一号から第五号までに掲げる事項につき、故意に事実を告げない行為をしてはならない

3 販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない

第七十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第六条、第二十一条、第三十四条、第四十四条、第五十二条又は第五十八条の十の規定に違反した者

特定商取引法

さらに,上記類型の取引においては,特商法が定める要件を記載した法定書面を交付しなければならない。
この書面の不交付記載不備虚偽記載がなされている場合には,6ヶ月以下の懲役,100万円以下の罰金という罰則が定められている。

第七十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第四条、第五条、第十八条、第十九条、第三十七条、第四十二条、第五十五条、第五十八条の七又は第五十八条の八の規定に違反して、書面を交付せず、又はこれらの規定に規定する事項が記載されていない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付した者

特定商取引法

これらの犯罪に該当する場合には,被害届や刑事告訴により,情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)の刑事処罰を求めていくことができる。

被害届とは,犯罪被害にあった事実の申告をいう。

刑事告訴とは,犯罪事実について犯人の処罰を求める意思表示をいい,告訴は,検察官への書類の送付や,処分を告訴人に通知しなければならないなどの義務が生じる点で被害届よりも強いものといえる。

情報商材詐欺の被害にあった場合に,詐欺罪や特定商取引法違反の罪により,被害届や刑事告訴をすることにより,警察が捜査をし,場合によっては詐欺師を逮捕することになる。

この場合,逮捕された詐欺師が警察署の留置所から出るためはもちろん,最終的な処分の罪を軽くするため示談を申し入れてくることが多い。
この示談交渉の中で被害金を返金させ,損害金等を上乗せして回収できることがある。

ただ,情報商材の返金については,お金の返金という民事事件と詐欺罪等の該当性という刑事事件の境目のような事件であることもあり,警察がなかなか動きたがらない現状がある。

警察としても,どの点を疑罔行為と捉えて詐欺罪の成立を立証するかなど,捜査や犯罪の組み立てが難しい事件であるということも理由だろう。

もっとも,情報商材の逮捕事例も複数存在する。

最新のものでは,2020年にバイナリーオプションに関する情報商材の販売において法定書面の不備と不実告知の罪で逮捕されている事例,及び2021年に株式投資の情報商材を売る際に虚偽の説明をしたとして特定商取引法違反(不実の告知など)容疑で逮捕された事例がある。

24都府県3億5千万円被害か 特商法違反疑い逮捕

投資に関するノウハウ情報の売買契約でクーリングオフできるなどの説明をしなかったとして、岡山県警は、特定商取引法違反(不備書面交付、不実告知)の疑いで、男女4人を逮捕した。県警は、被害は愛媛や大阪など24都府県で20代を中心に約450人、総額3億5千万円以上に上るとみて捜査している。

逮捕されたのは、自営業の○○容疑者(27)=岡山市北区平和町、販売業の○○容疑者(21)=同市北区大窪=ら4人。県警は認否を明らかにしていない。

逮捕容疑は今年1~3月、岡山県内の20代男性3人に、金融商品「バイナリーオプション」の取引に関する情報商材を提供する契約の際、クーリングオフできるなどの説明をしなかったとしている。

産経NEWSより引用

株セミナーでウソ、20代狙いマルチ商法…福岡中心に会員数千人、十数億円売り上げ

株式投資の情報商材を売る際に虚偽の説明をしたなどとして、福岡県警は先月、投資スクール運営会社「alchemist(アルケミスト)」(東京都渋谷区)の役員ら3人を特定商取引法違反容疑で逮捕した。捜査関係者によると、同社は新たな客を勧誘すると紹介料が入る「マルチ商法」で会員数を数千人に拡大し、十数億円を売り上げていた。会員の9割は20歳代で福岡県の会員が全国で最も多く、対策弁護団も発足している。

 アルケ社の役員ら3人は昨年1月、東京都内のセミナーで、株式投資で確実な保証がないのに、「月5%稼ぐ能力をお伝えできます」「絶対にできます」とうそをつくなどしたとして、特定商取引法違反(不実の告知など)容疑で逮捕された。

讀賣新聞オンラインより引用

このように,情報商材詐欺を行う詐欺師(悪質な情報商材屋)については,被害届・刑事告訴をすることにより,示談というかたちで被害金を回収するという方法がある。

情報商材詐欺の返金成功例

ここまで、情報商材詐欺について、その手口や返金方法について解説をしてきた。

ここでは、実際に、グラディアトル法律事務所の弁護士が情報商材詐欺被害者の方からご依頼を受けて、返金・損害賠償請求の交渉等を行なって、被害金を回収できた成功例について紹介・解説する。

※依頼者の方の特定を防ぐため、実際の情報に変更を加えております。

情報商材詐欺の返金成功例1 チャージバック請求での返金事例

依頼者の方は、大阪府にお住まいの主婦の女性だ。

出会い系サイトで知り合った男性から仮想通貨投資について、自動売買ツールをつかって簡単に儲けることができると勧誘され、情報商材詐欺師のセミナーに参加することに。

そのセミナーでは、AIを使った自動売買ツールにより、誰でも簡単に資産を10倍以上にできると説明を受けた。

その後、セミナーで紹介されていたウェブサイト(LP)をみて、無料の情報商材を申し込んだ

無料の情報商材では、セミナー同様、どれだけ簡単に大金が稼げるかが記載されており、末尾に電話無料サポートの申し込みフォームが添付されていた。

依頼者が電話無料サポートを申し込むと、すぐに情報商材業者から電話がかかってきた。

情報商材業者が言うには、仮想通貨の自動売買ツールを使うことにより、誰でも簡単に大金が稼げる。その自動売買ツールについては、複数プランがあり、高額なプランでは使える機能が多く、より高いリターンを得られるとのことだ。一番安いプランでも30万円はかかると。

依頼者の方は手持ちのお金が無いので、購入は難しいと伝えたものの、後から必ず稼げるからクレジットを使ってでも購入した方がいい。このサービスには定員があり、今日購入しないと次にいつ購入できるか分からないと言われ、強引に、クレジットカードの限度額である50万円分の仮想通貨自動売買ツールを購入させられてしまった

そして、その場で、情報商材業者と電話をしながら、クレジットカードの決済手続きをさせられてしまったのだ。

依頼者は、結局、仮想通貨の自動売買ツールで稼ぐことができず、情報商材業者にその旨を伝えたところ、もう一つ上のプランなら、追加の機能があり、そちらの方がより確実に稼げるなどと、更なる勧誘を受けるだけで、何一つ改善しない事態に。

依頼者は、返金を求め、弁護士に依頼をすることにした。

弁護士は、依頼者がクレジットカードにより仮想通過売買ツールを購入していたことから、チャージバック請求での返金をすることにした。

本件の情報商材会社の販売行為は、特商法上の業務提供誘引販売、電話勧誘販売に該当し、法定書面も交付されていないことから、期間制限を受けることなくクーリングオフができることなどを記載して、クレジットカード会社、決済代行会社に対してクレジット契約の取り消し、チャージバックを請求する内容証明郵便を送付した。

その結果、チャージバックが認められ、情報商材詐欺の被害額全額の返金に成功した。

情報商材詐欺の返金成功例2 内容証明・交渉での返金事例

依頼者の方は、東京都新宿区の会社に勤める男性だ。

仕事後の時間や休日を利用して副業をしたいと考え、ネット上で副業を探していたところ、1日30分程度の作業で月額100万円以上稼げるという広告を発見した。

そこから、LINEに誘導され、「在庫を抱えない転売、せどりで、稼ぐ」「高額で転売可能な商品を教えるので、誰でも簡単に稼げる」などとの説明を受け、1万円の情報商材を購入した。

しかし、その情報商材には、具体的な稼ぎ方についての詳しい情報等の記載はなく、電話での説明を受けるよう誘導された。相談者が情報商材に記載されている電話番号に電話をすると、稼ぐためには、有料の電話コンサルを受ける必要がある確実に稼げるなどと誘導され、130万円の有料コンサルの契約をさせられ、130万円を指示された銀行口座に振り込んでしまった。

契約後も、メールマガジン(メルマガ)にて、抽象的な解説文書が送られてくるだけで、実際に商材を使用して稼ぐことはできなかった。

依頼者の方は、ご自身で情報商材業者に電話をして返金を求めたものの、返金はできないの一点張りで埒が開かなかった。

弁護士は、依頼者から情報商材詐欺師への返金・損害賠償請求の依頼を受け、本件ではクーリングオフが可能なことや、不法行為に基づく損害賠償請求ができること、依頼者が支払った131万円の返金を請求すること、情報商材の販売方法は特商法に違反するものであるから、返金に応じないのであれば、刑事告訴を検討することなどを記載した内容証明を送付した。

その後、情報商材詐欺師から弁護士宛に電話が来て、現在返金請求が殺到しており倒産も検討している、全額の返金は厳しく、3割の39万円の返金で納得して欲しい旨の申し入れがあった。

弁護士は依頼者と相談をし、倒産リスクなども踏まえて、交渉で話をつける方針を固めた。依頼者としてはなんとか半額は返金して欲しいとのことで、交渉の下限を半額65万円に設定をして交渉をすることに。

弁護士が情報商材詐欺師と粘り強く交渉した結果、8割強にあたる105万円の返金に成功した。

情報商材詐欺の返金方法まとめ

以上のとおり,情報商材詐欺の手口は様々あるものの,共通している部分が多い。

そのため,共通部分を理解することによって,情報商材詐欺の被害を回避することも可能である。

また,万が一被害にあってしまった際にも,内容証明郵便の送付,交渉,仮差押え,訴訟,差押え,口座凍結,チャージバック請求,刑事告訴など様々な返金方法がある。

自分のケースではどのような方法により返金を請求するのが適切か検討してみてほしい。

なお,詐欺被害の返金については,相手が金を持っているうちに,逃げ出す前に返金請求をするという時間的な問題もある。
実際,迅速に請求をした被害者には返金されたが,時間が経過した後の被害者には返金されなかったケースもしばしば見受けられる。

したがって,詐欺の被害にあったことに気が付いたらすぐに行動してほしい。

まずは,詐欺被害の返金に強い弁護士や,消費者センター,警察などに相談をしてみるのがよいだろう。

最後に,情報商材詐欺をはじめ詐欺に遭ったと思われた方は,遠慮なく当法律事務所にご相談ください。

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Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。