給料ファクタリングって違法!?弁護士が徹底解説

給料(給与)ファクタリングとは

「給料(給与)ファクタリング」とは、業者が勤め先のある個人に、給料日に受け取る予定の給料(給与)を債権として買い取るかたちで、前もって現金を融通するしくみのことをいいます。

そもそも「ファクタリング」とは、企業から売掛債権を買い取り、売掛債権の管理や回収を行う金融サービスのことで、個人ではなく企業がサービスの対象です。

企業としては、急きょ現金が必要になった際に、当該売掛債権の金額よりは安くなるものの、即座に現金を入手できるメリットがあります。
一方で、ファクタリング業者は、手数料等でその差額を利益として得ることができます。

この企業の売掛債権に対するファクタリングというサービスを、個人の給料(給与)を対象にしたものが給料(給与)ファクタリングということです。

・給料(給与)ファクタリングの勧誘手法

給料(給与)ファクタリングの業者は、Googleをはじめとした検索サイトやTwitterなどのSNSの広告を用いて、勧誘しています。

まず宣伝文句としては、給料ファクタリングとの言葉は難しいことから、「給料(給与)前払いサービス」「給料(給与)前借りサービス」業者などと称しています。

そして具体的には、「最短即日」「審査不要」「無担保無利息」など気楽さや手軽さを装ったり、「ブラックOK」と銀行や消費者金融など金融機関からは借りられない人も大丈夫などとうたって、利用者を誘っています。

特に最近では、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で給料が減少している人をターゲットに、「#コロナ」とハッシュタグをつけたり、「コロナでお困りの方」などの文言を利用している業者も見受けられます。

・給料(給与)ファクタリング業者との契約から返済までの流れ

給料(給与)ファクタリング業者は、問い合わせがあった人に対し、基本的に身分証と給料明細(数か月分)の提出を要求します。
本人確認と、給料明細から次に支払われる予定の給料を債権としてどのくらいの金額で買い取るかを決定するためです。

そして契約となれば、後述するよう実質的には利息であるものの、手数料という名目で差し引いた金額を契約者に入金します。

その後、契約者は支払い日に受けとった給料を業者に返済することになります。

・給料(給与)ファクタリング業者の儲けのしくみ

そもそも手数料が多くの業者の場合、後述するよう貸金業法および出資法が定める上限利息を大幅に超える額で設定されていることから、法外な利益を得ているといえます。

また、利用者は急きょ現金が必要になったことから業者を利用している以上、手数料を差し引かれた金額からその必要なところに使っています。
そして、利用者は本来自らが受け取るはずだった給料を業者の返済にあてなければなりません。

ですので、結局利用者は、手数料を差し引かれた金額から必要なところに使用した残額で、その次の給料支払日まで生活しなければいけないことになります。

そうなると現実問題、その次の給料支払日までの間に生活が立ちいかなくなった利用者は再度業者を利用することになり、結果として利用を辞めることができない状況に陥ります。

すなわち、利用者はいわば負のスパイラルに巻き込まれ、本来受け取る予定だった給料から業者に手数料を差し引かれた金額で毎月生活をしないといけないハメになってしまうのです。

これを業者側からみれば、給料(給与)ファクタリングの利用者の多くが再び利用するだろうとの予測のもとで勧誘し、リピーターからは毎月法外な手数料を受け取ることができるということです。

以上が給料(給与)ファクタリング業者の儲けのしくみです。

給料(給与)ファクタリングに対する金融庁の見解

結論からいうと、貸金業法で要求されている貸金業登録を受けずに給料(給与)ファクタリングを営む業者は、違法なヤミ金融業者となります。
以下、金融庁の見解をかみ砕いて説明します。

そもそも法律上、給料(賃金)の支払いは、会社(使用者)が直接従業員(労働者)に対して支払わなければならないとされています(労働基準法24条1項)。

ですので、従業員(労働者)から給料債権(給料を受け取る権利)を買い取るなどして譲り受けたとしても、譲り受けた人は会社(使用者)に対してその支払いを請求することは許されないと解釈されています。

したがって給料(給与)ファクタリングにあっては、譲り受けた人は労働者である利用者にしか支払いを請求できないことになります。

そうすると給料(給与)ファクタリングは、利用者に金銭を入金するだけでなく、利用者からの回収まで含めた資金移転のシステムが構築されているといえます。

これを経済的にみると、貸付け(金銭の交付と返還の約束が行われているもの)と同様の機能を持っていると考えることが可能です。

以上から、給料ファクタリングは、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当する「貸付け」であり、業(一定の目的をもって同種の行為を反復継続して行うこと)として行うことは、「貸金業」に該当すると考えられるということです(貸金業法2条1項)。

よって、貸金業登録(貸金業法3条)を受けずに給料(給与)ファクタリングを営む業者は、違法なヤミ金融業者という結論になります。

給料(給与)ファクタリングに対する裁判所の見解

給料ファクタリングに関する事件につき、東京地方裁判所は令和2年3月24日に判決を下しました。

事案としては、給料(給与)ファクタリング業者が7万円の給料債権を利用者から4万円で買取り、利用者が4日後に支払う契約で買戻し日の設定がなされたものの、支払うことを怠りました。
そこで、業者が利用者に対し支払いを求める訴訟を提起したというものです。

判決内容としては、まず金融庁の見解とほぼ同様の理由で、給料(給与)ファクタリング業者は「貸金業」を営む者にあたると認定
そして本件取引は、年850%を超える割合による利息とするものであり、貸金業法42条1項が定める上限利息を大幅に超過する。
それゆえ、本件取引は同項により無効であると。

また同時に、出資法5条3項に違反し、刑事罰の対象となるものとも。

したがって本件取引は無効である以上、本件取引が有効であることを前提にした給料(給与)ファクタリング業者の利用者に対する支払い請求はできない。

くわえて刑事罰の対象となる取引であるから、民法708条の不法原因給付(不法な原因のために金銭等を給付した(渡した)者は、その返還を請求することができないとするもの)に該当する。

結果、いずれにせよ利用者は受け取った金銭を返還する義務は負わないと判示。

まとめると、給料ファクタリング業者は、「貸金業」を営む者に該当するので、貸金業法および出資法が定める上限利息を超過した契約を利用者と締結した場合には、契約は無効かつ刑事罰の対象となるものであるから、利用者に支払いを請求することもできないし、利用者が返還義務を負うこともないというものです。

なお、貸金業法42条1項および出資法5条3項が定める上限利息は年109.5%です。
また出資法5条3項の刑罰は、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、またはこれを併せて科されることになります。

給料(給与)ファクタリングに関する最新ニュース

給料ファクタリング、実質的経営者か 貸金業法違反容疑で男逮捕

「給料を支給日前に受け取れる」などとうたって金を貸し付ける「給料ファクタリング」を巡り、大阪府警生活経済課は13日、コンサルタント会社社員、藤岡剛容疑者(40)=東京都江東区=を貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕した。

同課は7月以降、給料ファクタリングを手掛けていた会社の従業員ら7人を逮捕しており、藤岡容疑者で8人目。同課は同容疑者が実質的経営者だったとみて調べている。

逮捕容疑は今年3~6月、国や東京都の登録を受けずに、兵庫県や新潟県の20~40代の男性4人に対し計29万円を貸し付けた疑い。府警によると、「事実については一切記憶にない」と否認している。

一連の事件を巡っては、今年3~6月の利用者は約2800人いたとみられる。同課は藤岡容疑者について、法定上限(年利20%)を大幅に超える利息を受け取った出資法違反(高金利)の疑いでも調べる。

2020/10/13 20:46 (2020/10/14 8:09更新) 日本経済新聞

給料(給与)ファクタリングのまとめ

まず前述したように、給料(給与)ファクタリングはいちど利用してしまうと、再度利用せざるを得ない状況に追い込まれる可能性が高いものです。

ですので、手軽さや気楽さなどを宣伝文句として勧誘していますが、急きょ現金が必要になったとしても給料(給与)ファクタリング業者には絶対に手を出さないようにしましょう。

一方、すでに給料(給与)ファクタリング業者を利用してしまっている場合には、上記のとおり法律が定める上限利息を超過する契約であれば返済する義務はありません。

ただ自らで給料(給与)ファクタリング業者に返済義務がないことを伝えても、業者によっては聞き入れないばかりか、身分証や給与明細から個人情報・勤務先を知っていることをいいことに脅迫や恐喝がなされるケースもあります。

脅迫・恐喝の詳細については下記ページで解説していますので、ご参照ください。

したがって、給料(給与)ファクタリング業者に対しては、自らで対応しようとせず弁護士に相談・依頼すべきです。

なお給料ファクタリングについては動画でも解説しておりますので、よければご覧ください。

最後に給料(給与)ファクタリングでお困り・お悩みの方は、遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。