アサリで「口切れた」詐欺?言いがかりに聞き覚えで通報

ニュース内容

食器の破片で口の中が切れ、こぼしたソースでセーターが汚れた――。

東京ミッドタウン日比谷(東京都千代田区有楽町1丁目)の飲食店で言いがかりをつけ、弁償費用として現金をだまし取ったとして、警視庁は、住所、職業不詳の椿(つばき)昭夫容疑者(50)を詐欺の疑いで逮捕し、6日発表した。容疑を否認しているという。

逮捕のきっかけは、そのとき詰め寄られた女性店員からの通報だった。1カ月余り後に東京・原宿の飲食店で、「アサリの貝殻で口が切れた」と椿容疑者が声を荒らげている場面にたまたま居合わせたという。

丸の内署によると、椿容疑者は1月27日、東京ミッドタウン日比谷の飲食店で、アルバイト店員の30代女性に食器の破片のようなものを示し、口の中が切れ、ソースをこぼしたと主張。「責任者を出せ」と言いがかりをつけ、「同じセーターを買う」とうそを言って同店から2万7千円をだまし取った疑いがある。「後で領収書を持ってくる」と言い残したまま現れず、申告した住所や電話番号もうそだったといい、店長が2月4日に被害届を出した。

警視庁が椿容疑者の行方を追っていた今月5日、東京都渋谷区神宮前4丁目の飲食店で、聞き覚えのある言いがかりに気づいた女性が、椿容疑者だと確認。椿容疑者はアサリ入りの料理を食べていたという。

同様の手口による詐欺被害の届け出、相談がほかに都内で少なくとも6件あるといい、警視庁が関連を調べている。

2020年3月6日 17時57分 朝日新聞

弁護士からのコメント

今回のニュースは、飲食店で言いがかりをつけ、弁償費用として現金をだまし取ったとして詐欺の疑いで逮捕されたというものです。

つい先日も同様の事件があり、飲食店で想定されるいわば「飲食店詐欺」について下記解説いたしましたので、よければご参照ください。

そして先日の事件、今回の事件でもあるように、飲食店詐欺を行う詐欺師は様々な飲食店で詐欺を行います。

というのも、飲食店詐欺かもしれないと思いながらも飲食店側は内々に済ませ、警察に通報や被害届を出さないケースが多くあり、捜査機関に詐欺が発覚しにくいということを詐欺師が見越して動いているからです。

どういうことかというと、飲食店側はまず自らに落ち度がないと思っていたとしても、その場で証拠を示すことが難しいがゆえに強く言えないということがあるでしょう。

また警察沙汰になると当日のその後の営業ができなくなる可能性や、後日にも事情聴取などで時間を取られる可能性を考え、それに比べると口惜しいけれどもいくらかの金額で済むならと思い、不本意ながら支払うケースもあるでしょう。

さらに誰もが匿名で簡単に情報を投稿できる近年では、誰かが「店に警察が来た」との投稿をしたことがきっかけに、あらぬ方向に風評被害を受ける可能性があることも考慮すると、警察に通報すること自体ハードルが高いとも思われます。

このように飲食店詐欺の詐欺師は、飲食店側が弱い立場にあることにつけ込んで詐欺を行うのです。

ただ先日も解説いたしましたように、飲食店詐欺に遭わない対策としては毅然な態度で対応するべきです。

飲食店としては、本当に落ち度があったかどうかわからない以上、調査して落ち度があった場合には、後日しっかりと謝罪及び損害は賠償すると伝えましょう。

それでもいちゃもんをつけてくる際には、前述の風評被害リスクはあり得ますが、警察を呼ぶのも1つの手段です。

もし詐欺師であったなら、警察を呼ばれることは何としても避けたいと考えますので、警察が現場に来るまでに退散することも往々にあり、あらぬ風評被害リスクはそこまで高くないと思われます。

最後に飲食店詐欺に遭ったかもと思った際には、遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 刈谷龍太

グラディアトル法律事務所代表弁護士。
中央大学法科大学院修了。2012年弁護士登録。
離婚・労働・ネット・消費者被害など一般向けのトラブルから、企業法務や経営サポートなど幅広く担当。