亡き父が貸したお金を、相続した息子が父のために弁護士に依頼し全額回収!!

1.事案の概要~弁護士との相談に至るまで~

相談者は大阪に住む40代男性。
相手方は父の知人。

相談者の父は事業を行っており、相談者は父の事業を手伝っていました。
相手方は、父の事業の取引先関係者で、相談者も会ったことはありました。

ある日、相手方から相談者の父に借金の申出が。
急きょまとまったお金が必要になったとのこと。

相談者の父は、取引先との関係もあったことから200万円を貸すことに。
しかし支払期限を過ぎでも、相手方は返済しませんでした。

そこで相談者の父は、何度か催促
ただそのたびに相手方は、「もう少し待ってほしい」「必ず返すから」と言うばかり。
相談者も、父から「困ったものだ」と話を聞かされていました。

そんな矢先、相談者の父が急死
相談者は悲しみに暮れる中、通夜を執り行っていました。

そして相手方が通夜に参列していたので、話すことに。
相談者が「父が貸したお金、いつ返してくれるんですか」と尋ねると、まさかの「もう返済したから」との回答。

相談者は唖然とするとともに、強い憤りを覚えました。
死人に口なしだからといって、まさか通夜のときにそんな嘘をつくとはと。

相談者は四十九日法要が終わって落ち着けば、父のためにも絶対回収しようと決意。

四十九日法要が終わり、相手方に連絡。
そのときも、「全額返済したから」の一点張り。

相談者は、もう自分ではどうしようもないと思い、弊所のHPを見つけて相談に来られました。

2.弁護士との相談~方針決定~

まず前提として債権回収においては、いかに弁護士が交渉や裁判をはじめ訴訟手続などを行ったとしても、相手方が資産を持っていなければ回収しようがない、いわゆる「ない袖は振れぬ」リスクがあることを告知。

またこの相手方は、借りたにもかかわらず返済したとの詐欺まがいの発言をする人間なので、交渉はままならず訴訟までをも見越しておく必要があることも告げました。

それに対し相談者は、もちろん全額を債権回収したいが、お金の問題じゃないとのこと。
父が急死したことをいいことに態度を180度翻し、しかもそれを通夜のときに見せることが許せないと。

そこで、債権回収に向けて取りうる限りの手段を取ってほしいとのことでご依頼をいただくことに。

早速、方針を決めるために手持ちの証拠や知っている相手方の情報を確認。

証拠としては、借用書(金銭消費貸借契約書)のほか、返済を待ってほしいとの手紙
他方、相手方の情報としては、自宅を所有しているとのこと。

借用書(金銭消費貸借契約書)について中身を確認したところ、特に問題はなく裁判所に提出できるもの。
自宅につき、その場で登記情報を確認すると、たしかに相手方が所有しているものの金融機関からの抵当権がありました。

弁護士は、まずは内容証明を送付し交渉で債権回収をすすめていくことを提案。
そして相手方が交渉に応じない場合には、自宅の仮差押や訴訟提起を視野に入れることに。

ここで内容証明送付前に自宅の仮差押も可能ですが、後にしたのは以下の理由によるものです。

金融機関からの抵当権があったため、相手方の金融機関に対する債務金額によっては資産の保全という効果が少ない、場合によってはまったくないことも考えられるからです。

すなわち、仮差押から勝訴判決を得て自宅を競売したとしても、先に金融機関の抵当権があるがゆえに、その競売された代金はまず金融機関にあてがわれることになるので、どこまで依頼者が回収できるかはそれ次第ということです。

ただ一方で仮差押は、裁判所に申し立てる手続である以上、相手方に債権回収の本気度を示すことができる上に、訴訟と比べて時間も費用もかからないメリットがあります。
(*後で戻ってきますが、担保金(供託金)を用意する必要があります。)

以上を説明すると、弁護士さんにお任せしますとのことで上記方針で決定し、事件に着手していくことに。

3.受任後の弁護士の活動~解決に至るまで~

早速、弁護士は相手方に内容証明を送付

即、相手方から電話がくるも、依頼者のときと変わらず「もう返済したから」と。
弁護士は「返済したというのであれば証拠を示して」と伝えると、相手方は「手渡しで領収書など証拠はない」とのこと。
あわせて「裁判でもなんでもしてくれ」と言われ、電話を切られました。

以上を依頼者に報告。
弁護士は、案の定この相手方の対応では改めて連絡をとっても交渉にならないと思われるので、次の手段に出ざるを得ないことを伝えました。
依頼者は、仮差押えを行って、それでもダメなら訴訟までお願いしますとのことで、ご要望の順で進めていくことに。

弁護士は、相手方自宅の土地建物の登記(全部事項証明書)、固定資産評価証明書など必要な添付資料を揃え、仮差押えを申立てました。
そして、裁判所との面接を終え、担保金の供託を行い、無事仮差押命令がなされることに。

すると金融機関から仮差押の連絡があったのか、相手方がいきなり事務所に来所
ただそれでも相手方の言い分は変わらず、「もう返済しているから」と。
弁護士は、「それではもう訴訟提起になる」と伝え、お帰りいただきました。

依頼者には、残念ながら仮差押を行っても相手方は同様の対応だったので、訴訟を提起することになると報告。

その後、弁護士は訴訟を提起。
なお相手方は、弁護士をつけずに本人が行う、いわゆる本人訴訟でした。

訴訟においても期日を何回か重ねましたが、相手方は返済したというものの、その明確な証拠は提出できませんでした。
ですので裁判所としても、返済の事実は認められないとのことで、勝訴判決は出せるとのこと。

もっとも裁判所からは、分割払いの和解をしてはどうかとの提案がありました。

というのも相手方は、金融機関に対する債務金額がまだ約2000万円あり、その証拠も出せるとのことなので、勝訴判決に基づき自宅を競売したとしても、その固定資産評価額からして回収は厳しいのではと。

であるならば、期限の利益喪失条項をつけるとともに、全額支払うまでは仮差押を取り下げない条項をつけた分割払いの和解をする方が回収を見込め、依頼者利益につながるのではとのこと。

この裁判所からの提案を説明とともに報告。
弁護士としても、上記の条項を記載した和解であれば、仮に分割支払いを怠れば回収可能性は別にして残額を請求・執行することは可能だし、仮差押は取り下げないので分割払いを行わせる間接上の強制力もあるからと。

依頼者は、それなら和解でお願いしますとのこと。

結果、次回期日で和解が成立。

その後、相手方も裁判所あっての和解であったからか分割払いの期日どおりにすべて返済し、無事全額の債権回収となり解決に至りました。

4.弁護士からのコメント

残念ながら金銭等の貸し借りにおいては、踏み倒そうとする借主(債務者)は多くいるのが現実です。

借主(債務者)は、金銭等を実際に借りるまでは、平身低頭で「どうしても困っているから、必要だから」などと必死に貸してくれるようお願いしてきます。

しかしながら、いざ借りた後は「当初はちゃんと返済する予定だったが、思いがけないことが起こり予定が狂った、事情が変わった」などと何かと言い訳をして返済しないことが通例です。
なかには「あわよくば返さなくても問題ないだろう」と、最初から踏み倒すつもりで借りる借主(債務者)もいるほどです。

このような踏み倒そうとする借主(債務者)に対しては、いくら貸主(債権者)が催促してもまともに返済することはなかなかありません。
言葉を選ばず言えば、貸主(債権者)を舐めているということです。

そこで、貸主(債権者)が債権回収の本気度を借主(債務者)に示すためには、基本的には弁護士に依頼するほかないでしょう。

たいていの借主は、弁護士から内容証明が届いたり連絡がくることで、このまま返さないままだとヤバいと考え、返済しようとの行動に出ます。
さすがに踏み倒そうとする借主(債務者)であっても、弁護士が出てくることで、返済しなければ訴訟や差押えなどがされるということがわかるからです。

今回のケースでいえば、交渉ではままならず、仮差押え、そして訴訟にまでいったものの、結果借りたものは返済しなければならないと借主(債務者)は判断し、全額を債権回収するに至りました。

このように貸主(債権者)が自ら催促を行ってもどうにもならなかったものが、弁護士に依頼することで債権回収できることが往々にしてあります。

もちろん弁護士に依頼しても、「ない袖は振れぬ」で回収できない可能性もあります。
しかし、弁護士に依頼しない限り、「ない袖は振れぬ」なのかどうかもわからないでしょう。

言い方を変えれば、弁護士に依頼するという行動に出ないかぎり、債権回収できることもない一方、債権回収を諦めるべきとの判断もつかないということです。

ですので、自ら催促しても返済されない・債権回収できない場合には、まずは弁護士に相談すべきでしょう。

最後に、貸したお金を返してくれないという場合はもちろんのこと、債権回収でお困り・お悩みの際には遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。