資格詐欺の相手方から、交渉により受講費用等を全額返金!!

1.事案の概要~弁護士との相談に至るまで~

相談者は20代女性。
相手方はエステサロンの代表者。
きっかけはSNSの知人からの誘いでした。

その誘いは、今度大人数で花見をするイベントがあり、誰でも参加できるから参加しないかという内容。
相談者はちょうど予定が空いていたこともあり、参加することに。

参加すると、エステサロンが主催の花見イベントで、同年代の人も多く楽しい時間を過ごせました。
それからエステサロンの人から直接誘われるようになり、飲み会やバーベキューなどのイベントにも参加。
参加者は、エステサロンと関係ない人もいたものの、多くはエステサロンが行っているスクールの受講生や関係者でした。

花見イベントに参加してから約2か月後。
エステサロンの代表者からスクールを受講しないかとの打診が。
スクールの受講生らとも仲良くなっていたし、エステ自体にも興味も持ち出していたので、具体的な話を聞くことに。

話を聞くと、受講コースには初級・中級・上級まであるとのこと。
そして、今後エステサロンに転職したり、開業するには資格も取れる上級コースまで受講している方が絶対いいと。
また、上級コースまでまとめて受講するのであれば割引もあるからと、一括での契約を勧めてきました。

しかし相談者は、一括での契約となると高額であり、とても用意できる金額でなかったため難しいと回答
すると、代表者は消費者金融で借りればいいと。
実際、多くの受講生も消費者金融で借りて、一括で契約して受講していると。

相談者は、この話が本当がどうかわからず回答に困っていると、代表者がスクールの近くにあるからと車に乗せられることに
その後は、言われるがままに複数の消費者金融で一括払いの受講費用110万円を借り、その場で支払い、契約することになってしまいました。

なお、代表者から一括契約の割引分として、最も少ない消費者金融の借金分については代わりに返済しておくからと言われ、そのためにはローンカードや暗証番号含めた一式を預かる必要があるとのことで、預けることになりました。

それからは各種イベントは開催されるものの、肝心のスクールについては講師の都合が悪くなったとか最低開催人数が集まらなかったなどで中止となることが多々あり、なかなか受講できない状態でした。
またイベントの参加者も入れ替わりが激しかったこともあり、相談者は不審に思い始めました。

そんな矢先、最も少ない金額を借りていた消費者金融から連絡が。
内容は、返済が滞っているというものでした。
詳しく話を聞くと、返済が滞っていることはおろか、相談者が借りた金額に加えて40万円も借りられていることが判明。

あまりの事態に驚きを隠せないとともに、これはそもそも詐欺だったのではないかと思い、弊所のHPを見つけ相談に来られました。

2.弁護士との相談~方針決定~

そもそも前提として、資格に関する話においては、その向上心や上昇志向を巧みに利用した「資格商法」「資格詐欺」といえるものが少なからずあることを説明しました。
*「資格商法(詐欺)」については後述します。

今回のケースは、ほぼまともに受講を行わせていないことから、「資格商法」「資格詐欺」といってまず間違いないものであることを告知

あわせて、返済は代表者で行うと誤信させて消費者金融から契約金相当額を借入れさせたうえで、相談者にローンカードと暗証番号を交付させ、無断で借り入れた金額以上の金額を消費者金融から引き出した行為は詐欺罪(刑法246条1項)にも該当するものであることを伝えました。

相談者はショックを受けながらも、できる限り返金を求めてほしいとご依頼をいただくことに。

方針としては、まずは内容証明を送り、その後交渉により返金を求めていくことに決定。

また相談者によると、高級外車に乗っていたとのことで、返金に応じない場合はその仮差押えも視野に入れました。

さらに、特に借り入れた金額以上の金額を消費者金融から引き出した行為は、明らかに詐欺といっても過言でないため警察にも相談に行っておくように指示しました。

3.受任後の弁護士の活動~解決に至るまで~

弁護士は、早速内容証明を作成し送付。

依頼者と相談の結果、その内容は受講費用110万円の返金、無断で消費者金融から引き出した40万円の返金、消費者金融の利息相当額及び慰謝料を合わせた50万円の支払いを含めた合計200万円を請求するものに。

しかし、内容証明は宛所不明で弊所に戻ってきました。
HPや契約書などに記載されていた住所は、本当のものに似せた虚偽の住所であったということです。

調査して改めて内容証明を送付する手段もありましたが、たまたま別件で相手方近くに弁護士が行く機会が。
そこで弁護士は、依頼者とGoogleマップのストリートビューで確認していた建物の郵便受けに、同内容の書面を自らの名刺とともに投函。

なお、相手方の建物近辺に依頼者が話していた高級外車もとまっていたので、後に仮差押えを行うとなった際に必要となるナンバープレートなどを写真で保存しました。

すると、翌日に相手方から連絡が。
全額支払う気でいるが、一括での支払いは厳しいので分割でお願いできればとの内容。
そして、どのような分割となるか今の時点では何とも言えないと。

弁護士は、依頼者の了承ありきだが分割内容によっては検討できなくもないと伝え、1週間後に支払いスケジュールを送るようにと回答。

以上を依頼者に報告し、相手方が出す支払いスケジュールを待つことに。
一応の目安として、最低ラインで初回支払い時に請求金額の半額である100万円を支払わないものであれば、分割には応じないことを依頼者と内々で決定。

ところが、1週間後に出てきた支払いスケジュールは、なんと月5万円の分割払い。
弁護士は相手方に即電話しました。

まだ20代の依頼者に消費者金融に借金させてまで110万円も一括払いさせたのに、自らは5万円の分割というのは道理が通らないと強く詰問。

返答に困っているところに、弁護士は次の月末までに100万円を支払えないのであれば、民事訴訟にくわえ、被害届及び刑事告訴の手段も辞さないと畳みかけました。

相手方は何とか次の月末にまでは100万円を用意しますと返答。
弁護士は、少なくとも週に1回は必ず状況報告を行うように伝え、電話を切りました。

この顛末を依頼者に報告。
そして、支払われるかどうかわからないので、高級外車など相手方が有する資産の仮差押えをいつでも行えるよう準備していくことに。

そこで、弁護士のみが行える調査方法である弁護士会照会により、高級外車をナンバープレート等から調査
あわせて、相手方住所の土地及び建物登記を取り寄せ、所有者かどうかも調査することになりました。

調査結果を待っている間にきた相手方の状況報告は、何人かに声をかけ金策にあたっており、用意でき次第連絡するとのこと。

それから調査結果が届くも、高級外車も土地建物も相手方とは違う名義。
残念ながら差押え可能な資産は相手方にないことがわかりました。

弁護士は依頼者に報告。
この状況では交渉で粘り強く支払いを求めるほかなく、それでも応じない場合は裁判せざるを得ないことを伝えました。
依頼者は、弁護士さんにお任せしますが、借金の利息もあるので可能なかぎり早く支払わせるようお願いしたいとのこと。

依頼者の要望を踏まえ弁護士は、相手方からの状況報告を待つだけでなく、時間の空いている際にはこちらからも相手方に状況確認のため何度も連絡。

それが功を奏し、支払い期限の3日前に相手方から十中八九100万円を用意できそうとの回答をもらうとともに、もし支払いがない場合は次の手段を採ると念を押しました。
結果、月末に100万円がまずは支払われました。

そして残額100万円については、今後どのように支払っていくのかを相手方と交渉。

すると来月末にまた100万を支払うのは難しいが、金策でき次第、都度支払っていくのでどうにかそれでお願いできないかとのこと。
弁護士は、それなりの金額を支払っていくのであれば依頼者の了承を取れなくもないと回答し、電話を切りました。

依頼者に100万円の支払いがあったこと及び相手方が都度払いをお願いしていることを報告。
依頼者としては、月々最低20万円を支払ってくれるのであればよいとのことでした。

相手方にその旨を伝え、わかりましたとの返答。

その後、相手方は次の月末までに20万円を2回支払い、その翌月末には20万円を支払いました。
ただ徐々に、相手方からの状況報告が少なくなっていったこととあわせて、こちらからの連絡も出ないことが増加。
翌月末の支払い以降は、ついに状況報告もなくこちらからの連絡もまったく不通に。

弁護士は、以上の状況を依頼者に進捗あり次第報告していましたが、残額40万円についてどうするか打ち合わせすることになりました。

打ち合わせにおいて、もう連絡がつかない現状で残額を請求するには、追加の費用や時間もかかるが裁判に出るしかないことを説明。
依頼者は、残額に時間や費用をもうかけたくなく、返金を求めた分は全額支払われたので十分満足とのこと。

そこで、依頼は終結するに至りました。

4.弁護士からのコメント

今回の詐欺は、資格を利用したいわゆる「資格商法」「資格詐欺」といえるものでした。

「資格商法(詐欺)」とは、独立や就職に有利な資格であり、これを取得すればいつでも独立・転職できる、仕事を紹介するなどといって、その資格の講座受講料や教材を法外な値段で売りつける商法(詐欺)のことをいいます。

用いられる資格は、最新のものや比較的誰もが抵抗なく始められるものであることが多い傾向にあります。
最新のものは、先に資格を取っていれば有利であると勧誘しやすいですし、最新であるがゆえ世間に出回っている情報が少なく騙しやすいからです。
一方、難関資格や高度な特殊技能が必要なものになると、そもそも誘いに乗ってこなくなるからです。

「資格商法」「資格詐欺」に遭わない対策としては、少しでも不審な点があればきっぱりと断ることしかありません。
しかし相手方は、今回のケースのようにあの手この手を使い何とかして金銭を支払わせようとしているので、一筋縄ではいかないのが現実です。

もし勢いや雰囲気にのまれて断り切れず不本意に契約し金銭を支払ってしまった場合には、すぐに弁護士や消費生活センターに相談しましょう。
すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、早ければ早いほどクーリングオフや取消しができる可能性が高まるからです。

他方、今回の事例では、相手方の記載住所に内容証明を郵送したものの宛所不明で返送されてきました。
詐欺の場合、宛所不明や相手方不在で、内容証明が返送されてくることがままあります。
詐欺師は、自らの素性や所在がバレないよう虚偽・過去に住んでいた住所などを書いているということです。

今回は、依頼者が実際にその場に行ったことがあったことから、Googleマップのストリートビューを用いることで本当の住所を発見することができました。

このようにインターネットが発達したおかげで、その情報を駆使することにより、従来の方法では相手方を特定できなかったケースでも特定できる場合があります。

もっとも、インターネット上に情報があるといっても、それをどのように検索して発見するかはノウハウや経験が必要になってきます。

その意味で、相手方情報を調査する能力も弁護士の力量が問われるところといっても過言ではありません。
そして弁護士の力量は、どの分野の事件に多く携わってきたかにより大きく影響されます。

結果として、当事務所が設立当初から詐欺被害・債権回収に多く携わってきたことによる実績とノウハウが生きた事例でした。

最後に、「資格商法」「資格詐欺」に遭ったかもと思った場合には、遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 刈谷龍太

グラディアトル法律事務所代表弁護士。
中央大学法科大学院修了。2012年弁護士登録。
離婚・労働・ネット・消費者被害など一般向けのトラブルから、企業法務や経営サポートなど幅広く担当。