出会い系サイト・マッチングアプリ詐欺の返金方法を弁護士が徹底解説!

出会い系サイト(サクラサイト)を利用したが、相手と会うためにはポイントが必要と言われて100万円以上払ったが結局会うことができない

マッチングアプリで知り合った人から投資勧誘をされて、投資をしたが、出金ができない

など、出会い系サイトやマッチングアプリでの詐欺被害が増えてきています。

平成10年頃話題になり始めた出会い系サイトですが、現在では、FacebookなどのSNS提携型マッチングアプリ(Pairs、Tinder、イヴイヴ等)の登場により、その安心感から若者を中心として登録者が急増し、出会い系最盛期ともいうべき状況になってきています。

最近では、出会い系サイトもスマートフォンの出会い系アプリが主流となっています。

国内でのオンライン恋活・婚活マッチングサービスの市場規模は今後も拡大が予想されています。

国内でのオンライン恋活・婚活マッチングサービスの市場規模
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/assets/caution_internet_220121_0001.pdf

そして、新型コロナウイルスの影響から、リアルでの出会いが減り、出会い系の利用者が増加していることから、詐欺被害を含めた出会い系サイト・マッチングアプリのトラブルが増加しています。

出会い系サイト・マッチングアプリの被害相談件数(国民生活センター)
国民生活センターHPより引用

本稿では、そんな増加する出会い系トラブルの中で、出会い系詐欺・マッチングアプリ詐欺の手口と実例、返金方法についてご紹介させていただきます。

1.出会い系詐欺・マッチングアプリ詐欺とは何か

出会い系詐欺」とは異性との出会いを目的としたコミュニティサイトやアプリ、いわゆる「出会い系(マッチング)サイト・アプリ」を利用した詐欺のことを言います。
具体的な手口としては、

①サクラを使用して延々とサイトやアプリ上で話を続けさせることで有料ポイントを購入消費させる
②無料サイト・アプリから有料サイト・アプリに誘導して高額な登録料をとる
③サイト・アプリを通じて勧誘し、マルチ商法、投資詐欺、情報商材詐欺、仮想通貨詐欺、副業詐欺
をしてくる

などがあります。
特に①については、出会い系に限らずサクラサイト詐欺として平成20年頃から多数の被害が発生し、社会問題にもなりました。
なお、出会い系詐欺には、出会い系(マッチング)サイト・アプリ自体が詐欺集団によって運営されている場合と、サイト・アプリ自体は真っ当な会社が運営していてもそのサイト・アプリの利用者に詐欺集団が紛れ込んでいる場合があります。
上記の①については、前者が多く、②③については、後者が多い傾向にあります。

そのほか、出会い系サイトやマッチングアプリを利用して出会った異性に連れられて行ったお店でぼったくりの被害にあってしまうなどのトラブルも発生しています。

2.出会い系詐欺・マッチングアプリ詐欺の特徴

出会い系詐欺は被害金額が多額に上ることもありますが、多くの場合、少額を多数の利用者から騙し取ることを目的としています。
そのため、詐欺の手法自体はあまり凝ったものではなく、注意深く見れば容易に詐欺だと見破れるケースが大半です。
そんな出会い系詐欺を見破るための特徴についていくつか見ていきましょう。

①登録直後から多数の異性から連絡が届く
サイト・アプリに登録したばかりで、自分の個人情報もプロフィール画像も何も設定していないのにもかかわらず、いきなり10数人の異性から連絡が届いてきた場合、そのサイト・アプリ自体が詐欺集団によって運営されている可能性が非常に高いと言えます。
常識的に考えて個人情報も顔もわからない異性に対して連絡することなどありえず、それらは、利用者に返信させてポイント消費させることを目的としたサクラであることがほとんどです。

②メッセージの会話内容が噛み合わない
こちらもサクラであることを示す典型例であるといえますが、メッセージのやり取りをしていてコピペのような文面が送られてきたり、急に話が飛んだり、質問に対する回答がまったくなかったりした場合、サクラを使用している詐欺サイト・アプリである可能性が高いです。

③別のサイトやアプリに誘導してくる
メッセージのやりとりを2、3通交わすと、「このサイト・アプリあまり見ないから」「こっちのサイト・アプリの方が話しやすいから」などと言ってすぐに別のサイト・アプリに誘導してくる場合があります。これらは、真っ当な会社が経営している出会い系サイトに巣食う詐欺集団による場合が多いです。これによって、詐欺集団は、自分たちが運営している詐欺サイトに誘導するのです。

上記のような特徴が一つでも当てはまったら、出会い系詐欺であることを疑いましょう。そして、絶対にお金は払わないようにしましょう。

SNS・出会い系サイト・マッチングアプリを通じた詐欺の手口についての詳細は、以下の記事をご参照ください。

3.出会い系詐欺の刑事上民事上の責任

出会い系詐欺は、はたして、いかなる刑事上民事上の責任を負うのでしょうか?

まず刑事上、刑法246条の詐欺罪に該当します。

刑法246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪における「欺く」とは、判例上「交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ること」すなわち、騙された人がそれを知っていたらお金を払わなかったといえるようなことについて、騙す行為をいいます。
出会い系詐欺についていえば、本当はサクラしかいなくて異性と出会えないサイト・アプリであれば登録料を払うことも、お金を払ってポイントを購入することもなかったといえるような場合、詐欺罪が成立します。

なお、サイト・アプリ運営者だけでなくサクラをやっていた従業員についても詐欺罪が成立するとした判例があります。また集団で詐欺をしていた場合、組織的犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)によって重罰化されます(同法3条1項13号)。

組織的犯罪処罰法(組織的な殺人等)
第三条 次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。
 省略
十三 刑法第二百四十六条(詐欺)の罪一年以上の有期懲役

次に、民事上、民法709条の不法行為責任を負います。

民法709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

同条における「侵害」すなわち、加害行為とは社会的に不相当な行為をいうとされています。そして刑法上の詐欺罪に該当するような行為が社会的に不相当なのは当然であるため、民法上も責任が認められます。
この責任追及として詐欺被害者は犯罪者に損害賠償請求することができます。

4.出会い系詐欺・サクラサイトの逮捕事例

ここで過去に起きて、ニュースにもなった有名な出会い系詐欺、サクラサイトの詐欺事件、逮捕事例についていくつか紹介します。

①KING事件

出会い系サイトを運営していた大手の業者「KING」の経営者とそのアルバイト従業員らが、組織犯罪処罰法(詐欺罪)違反で東京地方裁判所および東京高等裁判所で裁かれ、有罪判決を言い渡された(平成24年(合わ) 第7号同第52号ほか)。
言い渡された刑罰は、実質的経営者が懲役12年の実刑、代表取締役であった者が懲役10年の実刑に加えて、アルバイト徒業員にも刑が言い渡される等、サクラサイト商法の深刻な被害実態を反映した極めて重い内容であった。

②アグライアジャパン事件

平成25年10月には、「アグライアジャパン」というサクラサイト運営業者が、アイドルになりすまして、約2100名から2億1000万円を願し取ったとして、組織犯罪処罰法違反容疑で、千葉県警に逮捕された。
その後千葉地裁は代表取締役に懲役4年の実刑判決を宣告した。

③ウイングネット事件

AKB48のメンバーやジャニーズ事務所のタレント等を騙るサクラや、多額の金銭供与を持ちかけるサクラがはびこる多数のサクラサイトをダミー会社に運営させて、数年間で約117億円もの被害を全国で発生させた出会い系サイトの大手グループであった、株式会社ウイングネットの経営者および幹部とサクラ役のアルバイト従業員らが逮捕、起訴されて有罪判決を受けた(執行猶予付きの1名を除き、実刑判決)。

④フェニックス事件

平成27年3月25日、東京の高田馬場にある出会い系サイトの事務所が捜索されて、メールオペレーターを含む34人が逮捕され、そのうち11人が組織犯罪処罰法(詐欺罪)で起訴された事件である。
運営事業者フェニックスに関しては、のちに経理担当者なども逮捕、起訴された。

⑤フリーワールド事件

平成28年9月には、ウイングネットの親会社とされ、またウイングネットに被害者を誘導する役割を果たし、広告費名目で多額の利益を享受していた株式会社フリーワールドの幹部が、詐欺罪により逮捕·起訴された。
海外に出国していた同社代表に対して、外務大臣が翌年には、旅券返納命令を通知し、帰国した同社代表は、組織犯罪処罰法 (詐欺罪)の容疑で逮捕·起訴されている(東京地方裁判所平成29年(合わ)4号ほか)。

5.出会い系詐欺・マッチングアプリ詐欺の返金方法

出会い系詐欺やマッチングアプリ詐欺については、サクラサイトなどの詐欺行為があれば、不法行為に基づく損害賠償請求ができ、それまでに費やしてしまったお金の返金の請求ができます。

また、消費者契約法や特定商取引法が定める契約解除事由があれば、これらの法律に基づき返金請求をすることもできます。

具体的には、不実告知,重要事項の不告知などがある場合に、この返金請求ができます。

不実告知とは,契約の重要な部分について虚偽の事実を告げることをいいます。

重要事項の不告知とは,契約の重要部分について伝えるべきことを伝えないことをいいます。

これらの法律上の返金根拠や損害賠償理由に基づき、出会い系詐欺業者に対して返金を請求していくことになります。

具体的な返金請求の方法としては、以下の方法が考えられます。

弁護士を通じて内容証明郵便を送付する

弁護士が、出会い系サイトやマッチングアプリの違法性を指摘し、返金・損害賠償請求の根拠とともに返金を求める書面を作成し、送付します。

内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を誰から誰宛に差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明してくれる郵便のことをいいます。

どのような請求書面をいつ送ったのかが証拠化されます。

また、この内容証明郵便には、出会い系サイトやマッチングアプリ業者の行為が詐欺罪や組織犯罪処罰法に違反する犯罪行為であり、返金・損害賠償に応じないようであれば刑事告訴等をせざるを得ない旨を記載し、返金を促します。

チャージバックで返金請求をする

出会い系詐欺やマッチングアプリ詐欺の被害にあった際に、その支払いをクレジットカードによりおこなっていた場合には、チャージバックという制度を用いて返金請求ができます。

チャージバックとは,クレジットカードの不正利用などの一定の理由がある場合に,会員(被害者)に返金がなされる制度であって,国際ブランドが定める制度のことをいいます。

チャージバックリーズンといわれるクレジットカード契約の取り消し自由を記載した書面をクレジットカード会社や決済代行業者に送付し、クレジットカード契約の取り消しを求め、それにより返金させるという方法です。

口座凍結で返金請求をする

詐欺罪などの犯罪の被害にあい、振り込んでしまったお金は口座凍結により返金請求をすることができます。

出会い系詐欺やマッチングアプリ詐欺の被害にあい、銀行振込により被害金を支払ってしまった場合には、この口座凍結という手段で返金請求ができます。

口座凍結は、振り込め詐欺救済法という法律に基づいておこないます。

振り込め詐欺救済法とは,犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律の略称であって,預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた方の財産的被害の迅速な回復等に資することを目的とする法律です。

詐欺師の口座が凍結されることにより、困った詐欺師が任意での返金に応じてくるパターンや、振り込め詐欺救済法に基づいて、凍結された口座のお金の分配を受けるというパターンで返金が実現されます。

6.出会い系詐欺被害における返金実績

実際に出会い詐欺被害にあってお金を支払ってしまった場合、いくら位取り戻せるのか?
弁護士に依頼された事件での返金実績についていくつか紹介します。

①初めは、低額のポイント料金だったのに、ポイント料金も徐々に上がり数億円の支援を受けることができるといううまい話に乗せられ、追加料金を払い続けたら89万円の被害総額に上ったケースで71万円の返金がなされました。

②芸能事務所に所属していると名乗る女性とメールのやり取りを続け、直接会うためにはポイントが必要などと言われ続け、結果被害総額が78万円に上ったケースで59万円の返金がなされました。

③出会い系アプリからサクラサイトに誘導され、文字化けの解除や様々な手続きにお金を払わされた事案において、口座凍結をして全額回収できました。

7.まとめ

出会い系詐欺の被害に遭われた方はそのようなサービスを利用していたことにろめたさを感じて泣き寝入りするケースも多いです。

しかし、出会い系詐欺はそのような被害者の後ろめたさをも利用した悪質な犯罪類型です。

グラディアトル法律事務所では、数多くの詐欺被害の返金請求事件を取り扱っており、実際に返金成功事例も多いです。

出会い系サイト詐欺やマッチングアプリ詐欺の被害を今後減らしていくためにも、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。